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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com

【第24回】「将来世帯推計」で見る、今後の賃貸住宅需要の変化


2024年4月

 日本の人口はすでに減少期に入っており、将来人口推計でも人口は大きく減少する見通しですが、一方で住宅需要に影響の大きい「世帯数」は国勢調査の調査開始以来増え続けています。
 4月12日に国立社会保障・人口問題研究所から最新の世帯数の将来推計(全国版)が公表されました。(都道府県別は今年の後半予定)将来人口推計・世帯推計は5年に一度の国勢調査に基づき推計され、そのため推計結果も5年に一度の公表となっています。今回公表の将来推計は、2020年の国勢調査に基づき、2025年から2050年5年ごとの推計結果となります。

 ここでは、我が国における「いまとこれから」の世帯数動向、そしてそれに伴う住宅需要の変化について解説します。

世帯数のピークは2030年

 今回発表された推計では、2030年まで世帯数は増え続ける見通しとなっています。前回(2015年の国勢調査に基づく2018年推計)の将来推計では、世帯数のピークは2023年頃で5,419万世帯とされていました。しかし、実際は、推計よりも世帯数は大幅に増加し、2020年の国勢調査では5,570万世帯となっていました。そして最新の推計では、世帯数のピークは2030年頃で5,773万世帯となっています。過去の3回の推計を振り返ってみれば、総世帯数は、推計以上の数字となっていることが続いています。
 その背景は後述しますが、単独世帯が推計を超える勢いで増え続けていることがあげられます。

標準世帯類型はすでに変わっている

 国などが社会福祉政策を策定する時に「標準世帯」としているのが、「夫婦と子」という類型です。「家族」から連想する世帯と言えば、確かに「夫婦と子」のイメージですが、現実的には、この類型が「標準的」つまり「もっとも一般的」な世帯ではなくなっています。1980年には、「夫婦と子」世帯は42.1%で最多類型(この時単独世帯は19.8%)でしたが、2020年時点では25.2%と約17ポイント減少しました。逆に単独世帯は38.0%と倍近くの割合となっています。
 「夫婦と子」世帯と逆転し、単独世帯が最多類型となったのは2010年の国勢調査で、それ以降、割合で見れば「夫婦と子」世帯は減少し、「単独世帯」は増え続けています。現時点(2020年国勢調査時点)で最も一般的な世帯は、単独世帯ということになります。
 そして、この傾向はさらに顕著となり、今回の推計で最も先である2050年には、単独世帯が全世帯の44.3%、夫婦と子世帯は21.5%となり、「核家族化が進すすむ」はすでに過去のものとなり、これからは一段と「単独世帯化」が進んでいくことになります。

世帯類型別の将来世帯数推計

 グラフは、世帯類型別の将来推計です。推計は5年ごとで2050年までの推計(30年先の推計)となっています。(ちなみに、今回からこれまでの推計よりも推計期間が5年長くなりました)。
 これをみれば、改めて単独世帯が増える予測であることがわかります。2020年では全世帯に占める単独世帯の割合は38.0%、2050年には44.3%になると推計されています。10世帯に4世帯以上は1人で暮らしているということになります。
 すでに我が国における世帯類型で最も多いのは1人暮らしでありますが、この傾向はさらに顕著となります。増加の要因として、未婚化・晩婚化が進んでいることがあげられます。生涯未婚率(50歳時点未婚率)は2020年の国勢調査では男性28.3%、女性17.8%となり、近年急上昇、さらに上昇する見通しのようです。

単独世帯の大半は賃貸住宅に暮らすという事実

 最新の2020年国勢調査によれば都市部では単独世帯の7割前後は賃貸住宅(民営・公営)に暮らしています。例えば、東京都では単独世帯のうち73.3%は賃貸住宅に住んでいます。
 単独世帯の発生要因としては、子どもの巣立った夫婦の死別に伴うものも多くありますが、この場合は賃貸住宅ではなく「持ち家」に住まうことが多くなっており、確かに全国平均や地方都市のデータをみれば、単独世帯で賃貸住宅に住む方の割合は6割前後となっています。しかし、都市部では、単独世帯が増える要因として、先に述べたように未婚化、晩婚化もかなり影響しているものと思われます。
 このように考えると、将来にわたり単独世帯の増加が見込まれる(ほぼ確実)ということは、都市部においては賃貸住宅需要が安定的に続く可能性が高いと言えるでしょう。

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