ファイナンシャルプランナー 山口 京子(やまぐち きょうこ)
元フリーアナウンサーのスキルを活かし、ファイナンシャルプランナーとしてテレビ・ラジオ等多数のメディアに出演、セミナー講師としても活躍。ワンストップで顧客にサービスを提供するため、生命保険、損害保険、証券外務員の資格も保有。不動産好きが高じて、宅建試験に挑戦し一発合格。顧客には、不動産オーナーも多い。 http://kyoko-yamaguchi.com/
高い買い物なのによくわからない
生命保険は人生で二番目に高い買い物と言われています。一番高い買い物はもちろん、不動産です。不動産を所有している人だけでなく、これから買う人にとっても大事な金融商品ですが、残念ながら、なんとなく加入している人がほとんどです。そして、全国でセミナーをすると、9割の方に誤解されています。
がんになるか入院するかは、個人差がありますが、だれでもいつかは必ず亡くなりますので、みなさんに共通する「終身保険」を例にとって見てみましょう。
30歳の男性が、亡くなったら300万円もらえる「終身保険」に入ります。保険加入後、1か月で亡くなっても、300万円もらえます。保険料を60歳で払い終えた後、90歳や100歳で亡くなっても必ず300万円もらえます。
クイズ1:保険は高いか安いか?
いつ亡くなっても、絶対に300万円もらえる「とりっぱぐれのない保険」、終身保険に入ると保険会社にトータルで払う保険料は、300万円より多いでしょうか?少ないでしょうか?
全国のセミナーで手を挙げてもらうと、9割以上の方が300万円より「高い」と答えます。「どれくらい高いと思いますか?」と聞くと「1割から1.5倍くらい高い」と答える人が多く、中には「保険会社に払うお金は3000万円くらいじゃないか?」つまり、10倍と答える人も1人、2人います。
正解は、300万円より安い。300万円のおよそ6割から8割で買えます。
保険会社によって商品内容が違うため差がありますが、保険料の総支払額が300万円より高くなるケースはありません。300万円の死亡保障を買うトータルコストは、240万円くらいであるということです。
クイズ2:終身保険は損か?得か?
60歳で保険料を払い終えた男性が、老後に保険を解約することにしました。保険会社はこの男性にお金を返してくれるでしょうか?
「保険料を払い終えちゃったんだから、そりゃ戻ってこないよ~」
「自己都合でやめたんだから、払った保険料は戻らない!」
「ちょっとでも戻ってきたらうれしい」
「払ったお金くらいは、返してほしい( ;∀;)」
だいたいこんな意見が出ます。
正解は・・・、「払った保険料よりも、多くお金を返してくれる」です。
分かりやすく説明するために、簡略化してありますが、青い線が払込保険料の累計です。赤い線は、解約すると戻ってくるお金、解約返戻金(かいやくへんれいきん)です。60歳までに解約した場合は払ったお金を下回りますがお金は戻ってきます。保険料を払い終わると、払ったお金よりも、解約返戻金の方が増えてきます。
さらに覚えておきたい裏ワザとして、保険は、一部だけ解約をすることができます。例えば、老後に病気や介護でお金が必要になった時に半分解約して解約返戻金を半分もらい、お葬式代として半分保障を残すこともできるのです。
「終身保険はそんなことができるのか!」「知らなかった」
会場がどよめきます。では、なぜ誤解されていたのでしょうか。
保険は内容とコストで考える
生命保険は、終身の死亡保障だけでなく、定期保険(期間が決まっているもの)、医療保険、がん保険、介護保険、収入保障保険などなどたくさんの種類があります。多くは、めったに起こらないピンチの時の経済的損失を安い保険料でカバーするものです。
かぜ保険はないけれど、がん保険があるのは、かぜは1年に一度かかるかもしれないけれど経済的損失が低く、手持ちのお金でカバーできるのに対し、がんにり患した場合、治療に長い期間かかるため、経済的損失が大きいからです。
安い保険料で損失をカバーする保険は、「掛け捨て」と言われる、解約返戻金がないか、あってもごくわずかです。掛け捨ては、安いコストで大きな保障が買えるメリットがあります。ただ、必要以上に保障を大きくし、おすすめのまま保障の数をふやすと、トータルでは高い保険料になるケースがほとんどです。
ですから・・・
「保険は高い」
「保険は義理で入るもの」
「保険は損をする」
保険にはこんなイメージが付きまといます。終身保険さえも、正しく理解されていないのは、いくらの保険料でどんな保障を買っているのかよくわからず、コストに見合わない高い買い物をしているイメージがあるからと言えます。
およそ9割の世帯は、何かの保険に加入しています。保険は一度加入したら、終わりではなく自分の意志で見直すことができます。今入っている保険が、どんな保障内容なのか、それぞれの保障のトータルコストはどれくらいかかるのか、将来の解約返戻金は、どれくらいなのか。リスクヘッジコストとして保険料が妥当なのか、一度じっくりと考えてみるといいですね。次回は、不動産購入時の保険の見直しについてです。
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