不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com
【第21回】2040年までの将来人口見通し発表! 賃貸住宅投資は首都圏物件の一択?
2024年1月
賃貸需要の予測
区分マンションをはじめ、賃貸用住宅への投資を行う際には、将来にわたる賃貸住宅需要の見通しを行うことは重要です。住宅需要は、人口、あるいは世帯数である程度(2拠点生活の方もいますので、ある程度と表現しています)決まります。特に、賃貸住宅のうちワンルーム・コンパクトタイプ物件は、10代後半~30代の方がメイン需要となりますので、これらの年代の人口の将来見通しは重要です
2000年以降、生涯未婚率(50歳時点まで1度も結婚されない方)が急上昇しており、男性では25.7%、女性では16.4%(2020年国勢調査より)となっています。特に首都圏ではこの割合が高いとされています。生涯未婚率の将来予測のデータはありませんが、このところの伸びから考えれば、この先さらに増えるでしょう。単身世帯は、親から独立して未婚の方と離婚された方、そして高齢者の配偶者と死別された方の3パターンありますが、このうち、前者2つの方の多くは賃貸住宅に暮らすことが知られています。人口見通しだけでなく、こうした世帯動向・見通しも賃貸住宅需要では重要となります。
将来人口推計とは
我が国において将来の人口や世帯数がどうなるか、「将来人口・世帯数の推計」は、国立社会保障・人口問題研究所が行っています。この推計は5年ごとに公表されます、具体的には、5年ごと(5の倍数の年)に行われる国勢調査に基づき、その3~4年後に推計を行い発表しています。
東京都の将来人口は?最新の将来人口推計
国立社会保障・人口問題研究所より、23年12月22日に、「地域別将来推計人口」が発表されました(人口のみで世帯数は未発表です)。この推計は、2020年に行われた国勢調査をもとに、2050年までの向こう30年間を5年刻みで推計が行われています。
2015年の国勢調査から2020年の国勢調査の間には、39の道府県で人口が減少しましたが、次回の国勢調査の年である2025年までの5年間には、東京都を除く46の道府県で人口が減少すると推計されています。
東京都は25年以降も人口が増え続ける唯一の都市で、20年を100とすれば35年の人口は102.9、50年には102.5となります。東京都の人口のピークは、2040年~45年の間と推計されており、東京の一極集中が言われていますが、これからが本番のようです。
図のように、大阪府・愛知県と比較するとその状況がよく分かります。
1都3県の人口割合は増え続ける
全国人口に占める東京の割合は、2020年時点では11.1%となっており、この先の見通しでは、5年ごと刻み(国勢調査ごと)でみれば毎回増え続け、2040年には12.9%、2050年には13.8%にまでなります。
1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)のうち、2025年以降も人口が増え続けるのは東京都だけですが、埼玉・千葉・神奈川でも他の地域(たとば、関西など)に比べ減少が少ないため、1都3県(本推計では南関東と表記されています)の人口割合は増え続けます。
1都3県に住む人口割合は、2020年時点では29.3%、2025年には30.0%と3割を超え、2040年には33.7%となります。
2040年の生産年齢人口では首都圏だけが増える
また、生産年齢人口とよばれる15-64歳(賃貸住宅需要の中心)は2000年を100とすれば、2040年に100を超えるのは唯一東京都だけとなります。また、地域ブロックでみれば、1都3県では、15-64歳人口は20年では31.1%ですが、40年には34.4%と増えており、他の地域では、2040年の推計では多くても17%台(近畿ブロック)ですので、首都圏の割合の圧倒的な多さが分かります。
賃貸住宅投資は首都圏物件の一択?
このように、首都圏一極集中は、(現状から大きな変化がないとすれば)ますます進むことが確実のようです。つまり、人口の将来見通しから鑑みれば、賃貸住宅への投資で、長期的に安定的な収益を上げる可能性があるのは、首都圏の物件だけ、と言っても過言ではないのかもしれません。
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