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相続実務士 曽根 恵子(そね けいこ)
【相続実務士】の創始者として1万4,500件の相続相談に対処。(株)夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。出版書籍53冊、累計39万部出版、TV・ラジオ111回出演、新聞・雑誌取材協力425回、セミナー講師実績500回。(2019年5月時点) https://www.yume-souzoku.co.jp

財産があっても、対策ができていない

 これから相続を迎える高齢者層、70代、80代、90代の方々は、戦争を体験されたこともあり、物を大事にされる年代だと言えます。コツコツと貯蓄し、財産を残す事に価値を見いだしてこられた年代でもあるでしょう。自分は贅沢をすることなく、「子どもや孫のために財産を残す」ことが大事だと思われてきました。
 それだけに「財産は残すもので使うものではない」と思って生きてこられた親世代の方々は、ずっとその考えのまま高齢になり、財産があっても、なんら対策ができていない方がほとんどです。

親任せにせず対策に取り組もう

 相続に関して親世代に任せっきりで何の対策もせずに相続を迎えてしまうと、財産は確実に減ってしまいます。これに気がついた子供世代の方々は、自分たちで専門家と相談し対策の方法を選択し、親や兄弟に説明して具体的な相続対策に取り組むようにされています。
 子供自身が積極的に取り組むことによって、相続税の節税から資産の組み替えに成功された事例をご紹介します。

【事例1】子供が自宅を処分して同居。特例を使えるようにした

◇母親は1人暮らし

 Aさん(60代男性)は三人兄妹の長男。父親は既に他界し、母親(80代)は都心の戸建て住宅で1人暮らしをしてきましたが、自宅で転んだときに骨折し、現在はリハビリ病院に入院中です。近くに住む長女が母親のサポートをしてくれています。
 母親が高齢になってきたことや、相続税が改正されたことなどから、いよいよ母親の生前対策をしておかなければと、Aさんが相談に来られました。
 Aさんは長男ですが、結婚して家を購入したため、同居はしていません。長女も持ち家に住み、次女は海外で暮らしていて、日本にはほとんど帰ってきません。

◇都心の自宅の評価が高い

 母親の財産内容は、自宅の土地(340㎡)が2.4億円、建物1000万円、隣接する賃貸マンションの土地1億円、建物2500万円、預金1000万円、有価証券800万円、合計3億9300万円となりました。相続税の計算をすると8700万円と算出されました。
 課題となることは、
①自宅の立地がよく土地の評価が高いことが起因して、相続税は8700万円と高額になること
②現在の金融資産は1800万円しかなく、納税できる現金が足りないこと
③自宅と賃貸マンションの建物はともに築30年以上で維持費がかかること
です。

◇節税のために子どもが住み替えを決断

 節税対策の方法をいくつか提案しましたところ、Aさんは80代の母親が自宅を売って住み替えたり、賃貸マンションを建て替えたりすることはハードルが高いと判断されました。
 そこで、母親の負担がなく節税効果が得られる方法としては、Aさん夫婦が自宅に同居し、小規模宅地等の特例を適用することです。そうすれば1億8635万円評価が下がり、相続税は2660万円まで下がりますので、金融資産を元手に相続税を払える可能性が出てきます。
 自宅を残したままの同居では特例が使えないため、Aさんの家は売却し、家賃が入る区分マンションを購入するようにしました。同居は、母親や妹からも願ってもないと同意が得られ、節税もできた上に、家賃収入が入るようになります。子供たちが独立して夫婦2人だけなので、こうした節税対策のための住み替えができるのだと言えます。

◆対策のポイント

・同居して小規模宅地等の特例を適用する
・子どもの自宅は残さず売却して区分マンションに

【事例2】預金を下ろして区分マンションを購入して節税した

◇父親はずっと自宅に住んでいたい

 Bさん(60代女性)は一人娘ですが、嫁いで1時間ほど離れた土地で生活しています。両親は二人暮らしをしてきましたが、母親が先に亡くなり、80代の父親が一人暮らしを続けてきました。
 ところが体調を崩して病院で検査をしたところ、ガンと宣告され、現在は治療のために入院中です。空き家になった家の管理も大変になり、相続のことも考えておきたいと、夫婦で相談に来られました。父親が入院するときに、預金通帳なども預かりましたが、思いの外まとまった額があることを知ったため、相続税がかかるのではと不安だということです。

◇自宅を売却する決断はできず

 父親の財産を確認すると自宅の土地が1534万円、建物105万円、預金7000万円、合計8639万円となりました。相続人はBさん1人のため、このままでは相続税は812万円かかると計算されました。
 父親の自宅は狭いため、Bさん夫婦と子ども3人が同居することはできません。ならば父親の家とBさん夫婦の家を両方とも売却して、二世帯住宅に住み替えてはどうかという提案をしましたが、父親が自宅を売却する決断ができず、退院後はまた自宅に住みたいというのです。

◇預金を下ろして区分マンションに、さらに贈与

 そこで預金で区分マンションを購入し、不動産評価に替えてから、Bさんに贈与する方法を選択されることになりました。2700万円で都心の区分マンションを購入することで不動産評価は508万円と20%以下まで評価が下がり、小規模宅地等の特例も使えるようになります。これで相続税は355万円となり、半分以下に節税する事ができます。
 さらに不動産を贈与すれば、贈与税はかかりますが、現金増を防ぐ事ができ、家賃はBさんに入り、財産の前渡しができます。さらにもう一部屋購入すれば、さらに節税効果が高まるため、立地のよい物件が見つかり次第、購入して対策を進めようとBさん親子の意思確認はできています。

◆対策のポイント

・預金を下ろして区分マンションを購入し、賃貸して評価を下げる
・現金ではなく不動産にして評価を下げてから贈与する

 以上、相続を子供世代が主導して進めることにより、親世代ではできなかったことができるようになり、結果、相続税の節税はもちろん、資産の組み替えによって大切な財産を守ることが可能となります。親子でしっかりと話し合い、早め早めに対策を考えていくことが重要です。

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