不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com
【第6回】新型コロナウイルスの影響はどれくらいあったのか? 最新基準地価 東京23区の状況
―2020年基準地価の概要
―2020年基準地価:東京23区の状況
―2005年以降の基準地価の変動率:投資家を呼び込む上昇パターン
―ミニバブル期を超えても、投資家の熱は冷めていない
―2021年の予想
2020年基準地価の概要
9月29日に基準地価が発表されました。
基準地価は、都道府県が調査の主体となり、国土交通省が集計して毎年9月20日ごろに発表されます(今年は新型コロナウイルスの影響のためか、発表が例年に比べて遅くなっています)。公表される他の地価(公示地価・路線価など)は1月1日時点ですが、基準地価は7月1日時点となっているため、今年の基準地価は例年以上に注目を集めました。今年は春先から新型コロナウイルスの影響が大きかったため、「地価にその影響がどのくらいある(あった)のか」ということです。
各メディアでも報道されていますので、ここでは簡単に2020年基準地価の状況をお伝えします。
全用途(住宅・商業・工業)の全国平均は-0.6%、2年連続続いたプラスからマイナスに転じました。また、住宅地は昨年-0.1%だったのが、-0.7%に、商業地は+1.7%が-0.3%に、工業地プラス1.0%がプラス0.2%となっています。昨年まで、全用途は5年連続のプラス、住宅地は3年連続のプラス、商業地は6年連続のプラスと、バブル崩壊以降では、最も長期間の上昇を続けていましたが、新型コロナウイルスによる影響により腰折れ感が強く出た結果となりました。
ここからは、投資用マンションが多く建つ東京23区の状況を見ていきます。
2020年基準地価:東京23区の状況
東京23区の基準地価は全用途平均で前年比1.6%上昇し、8年連続の上昇となりました。しかし、昨年6.5%であった上昇率は1.6%となり、伸びが鈍化ました。
住宅地に限ってみると、昨年はプラス4.6%でしたが、今年はプラス1.4%となり、伸び率が低下しました。
東京23区の住宅地の基準地価は、2013年に上昇に転じて以降今年を含めて8年連続のプラスとなりました。2013年にプラスに転じて以降昨年まで、上昇の幅も年々大きくなっていました。今年は、上昇はしたものの、プラスの幅が多少減ったということになります。
2005年以降の基準地価の変動率:投資家を呼び込む上昇パターン
下図1は、2005年以降の東京23区における基準地価の変動率を示したものです。
(図1)東京23区(住宅地)基準地価 変動率の推移
これをみると、ミニバブルとよばれた2005年からの上昇は2006、7年に2ケタ上昇だったものの、2008年までの4年に過ぎません。2013年から続く現在の不動産好景気は、上昇幅は2ケタに届かないものの8年を超えています。
この「ジワジワと上がり続けている状況」は、ミニバブル期のように「一気に上がる状況」に比べて、「まだ上がる余地がありそう」という投資家を呼び込む環境にあると言ってよく、2020年は新型コロナウイルスの影響が出て上昇幅にブレーキがかかりましたが、おそらく一過性のもので、特にワンルームマンションをはじめとした住居系物件に対する不動産投資家の投資熱は、冷めていないようです。
ミニバブル期を超えても、投資家の熱は冷めていない
こうした状況は、変動率よりも、地価のグラフで見る方が分かりやすいのかもしれません。
下図2は、2005年から2020年までの基準地価の推移を示しています。
(図2)東京23区(住宅地)基準地価価格(平均)の推移
ミニバブル期の東京23区における基準地価のピークは2008年でした。その後リーマンショックにより、下げに転じます。2103年からジワジワ上がり続けた地価は、2019年にミニバブル期のピークを抜き、2020年はそこから上昇しています。
住宅地においては、実需ではマンション契約(新築・中古)とも4~6月の動きは止まりましたが、その後は以前のように回復しています。また、投資用マンションにおいては、新型コロナウイルスの影響はほとんど受けていないようで、中には「レジ投資市場は、コロナ前よりもいい」という業界関係者もいます。
2021年の予想
こうしたことから考えると、東京23区における2020年の基準地価は、上昇しているものの、昨年よりも上昇幅が小さくなりましたが、これは一過性のもので、来年には再び上昇幅が元に戻ると予想しています。
マンション投資(ワンルームマンション、1棟モノレジ)はとくに、大きな変化はなく順調で、これはしばらく続くと思います。
実需マンションですが、こちらはコロナショックに伴う所得の減少がはっきりと見え始めると、少しネガティブな状況になるかもしれません。その兆候は、一般的には新築マンションは、なかなか動きが見えにくいので、中古マンション価格を注視しておくといいでしょう。
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