ファイナンシャルプランナー 山口 京子(やまぐち きょうこ)
元フリーアナウンサーのスキルを活かし、ファイナンシャルプランナーとしてテレビ・ラジオ等多数のメディアに出演、セミナー講師としても活躍。ワンストップで顧客にサービスを提供するため、生命保険、損害保険、証券外務員の資格も保有。不動産好きが高じて、宅建試験に挑戦し一発合格。顧客には、不動産オーナーも多い。 http://kyoko-yamaguchi.com/
物件購入の前に保険を確認
生命保険には、病気の時にお金が出る保険と、亡くなった時にお金が出る保険と大きく分けて2種類あります。まず調べるのは、亡くなった時にお金が出る保険です。加入の目的は、お葬式代と死後の整理資金のためですか?残された家族の生活費を保障するためですか?どちらの目的で加入したのか調べておくと、ローン選びと不動産購入後の保険の見直しに役に立ちます。保障内容も調べましょう。
保障内容を調べるポイントは「いつ・いつ・どん」です。
「いつ」までの保障?
「いつ」までお金を払うの?
「どん」な時にお金が出るの?
前回の「正しく理解している?生命保険」に出てきた終身保険は
いつまでの保障?⇒一生
いつまでお金を払うの?⇒60歳
どんな時にお金が出るの?⇒亡くなったら300万円
このようになります。
300万円という保険金は、お葬式代と整理費用に充てられるでしょう。十分お金が貯まっていれば老後、解約して解約返戻金を旅行や、物件の修繕、介護費用などに充てることもできます。
定期保険なら
いつまでの保障?⇒60歳まで
いつまでお金を払うの?⇒60歳
どんな時にお金が出るの?⇒亡くなったら3000万円
3000万円という大きな保障は、お葬式代だけでなく家族の生活費保障でしょう。解約返戻金はないか、あってもごくわずかです。
収入保障保険なら
いつまでの保障?⇒60歳まで
いつまでお金を払うの?⇒60歳
どんな時にお金が出るの?⇒亡くなったら家族に毎月10万円
このようになります。
亡くなった人のお給料の代わりに、家族が毎月決まったお金を受け取ることができます。また、受取総額は毎月受け取る場合に比べ少なくなりますが、一時金として一括で受け取ることもできます。解約返戻金はありません。
団信と保険の見直し
個人で投資用の不動産を買う場合、もしローン返済中に、借入をしている人が亡くなっても、家族が借金を背負わなくてもいいように、残りの借入額を返済してくれる、団体信用生命保険、通称「団信」という保険があります。
団信付きのローンを組むと、万が一の場合は保険で借入金がなくなりますので、家族は家賃収入を受け取ることができます。もしそのお金で生活できるのであれば、「家族の生活費」目的で加入していた定期保険や収入保障保険のような保障は必要なくなります。投資用の不動産が、保険代わりになるというわけです。
ワンルームマンションをいくつか買う人は、一つは妻に、残りはそれぞれ子どもたちにと、保険+将来の資産形成と相続税対策で買う人が多く見受けられます。
がんになったら借入ゼロに!
ひと昔前の団信は、死亡と高度障害時のみの保障でしたが、今はがんと診断されたり、急性心筋梗塞、脳卒中などで所定の状態になったらローンの支払いが無くなる特定疾病保障のついた団信もあります。本人が生きていてもローンの支払いがなくなるため、病気で働けなくなった時の備えになります。保障が手厚い分、金利は0.2%~0.4%程度上乗せされます。
保険会社にも就労不能保険などの、特定疾病で働けない状態になった時に、保険金が受け取れる商品があります。特定の病気になるリスクに備えたいのであれば、金利差で増える毎月の返済額と保険会社の同様の保険と比べてみるといいでしょう。各社、保障内容と保険料が違いますので、複数社調べてみる必要があります。年齢にもよりますが、同様の保障であれば、特定疾病保障付きの団信の方が割安になることが多いです。
がんと診断されてローン残高がゼロになるなら、がん保険はいらないでしょうか?と、よくご質問をいただきます。がんと診断された場合、特定疾病保障付きの団信ならローンはなくなり、毎月家賃収入が継続的に入ってきます。家賃収入の額にもよりますが、家賃はまとまって入ってくるわけではないので、家賃収入は、働けなくなった時の収入減に備えるため、治療費はがん保険で備えると分けて考えると安心感が増します。
物件購入後の見直しのまとめ
〈解約・一部解約〉
物件購入後、団信に加入していれば、「家族の生活費」目的で入っていた保険を見直しましょう。保険は解約だけでなく、一部解約し、保障を少なくすることもできます。解約して保険金の少ない新しい保険に入りなおすよりも、若い年齢で入っていたほうが、保険料が安くなるケースがほとんどです。
〈保険料を払わずに保障を続ける〉
「お葬式代」目的で入っていた保険は、解約返戻金を調べましょう。10年以上前に入った終身保険は予定利率が高かったので、お宝保険と呼ばれています。定期預金代わりに持っておいてもいいでしょう。続けるつもりがなければ、解約の他に「払い済み保険」といって、保険料を払わず、保障は少なくなりますが続けることもできます。
〈医療保険〉
テレビコマーシャルでよく見かける、日額5000円、一回の入院限度日数60日型の医療保険は、どれだけ長く入院しても、もらえる入院給付金は、5000円×60日=30万円です。その他手術給付金が10万円もらえたとしても、合計40万円。すでに、家賃収入で手元に十分お金があるなら、医療保険を解約し、預金で備えることも検討しましょう。
ただ、元気な時の40万円と、病気で落ち込んでいるときの40万円は同じ40万円でも重みが違います。医療保険の総支払額は100万円程度、入院した時に、病院のATMに行って銀行からお金を下ろすのはつらいけれど、預金で備えるのが合理的と考えるなら、医療保険は解約してもいいでしょう。
自分の口座のお金を減らさず別のお財布からお金が出るのであれば、個室に入って療養に専念したいと考えるなら、医療保険は残しておきましょう。
同じワンルームマンションのオーナーでも、その人によってお金の価値観や、万一の時の家族への思いは違います。自分の価値観にあった保険の見直しをしたいですね。
最新のコラム
不動産エコノミスト
吉崎 誠二(よしざき せいじ)
ファイナンシャルプランナー
大竹 のり子(おおたけ のりこ)
国際認定テクニカルアナリスト
横山 利香(よこやま りか)
- <第1回>ウッドショックで上昇基調を示した不動産市況と株式市場
- <第2回>コロナショックでも堅調な状況が続く不動産市況とREIT市場
- <第3回>感染症の流行を機にDX化が進む不動産業界と、後押しするデジタル改革関連法
- <第4回>民法改正を機に活用が進む不動産賃貸業における保証業務とは
- <第5回>オリンピックに向けて上昇が続いた不動産価格の今後の行方
- <第6回>感染症の影響を受けて、住宅設備機器が品薄状態に!
- <第7回>不動産業界で進むDX化を取り入れて、入居者に選ばれる物件になろう!
- <第8回>世界的なインフレの到来に不動産で備えるということ
- <第9回>米国のインフレがJ-REIT市場に与える影響
- <第10回>不動産価格上昇で考える有望な不動産投資エリアと世代とは
- <第11回>金利上昇時の不動産投資をどう考えるか
- <第12回>不動産価格上昇時でも成功する不動産投資
不動産エコノミスト
吉崎 誠二(よしざき せいじ)
- <第1回>新型コロナウイルスが不動産市場に与える影響は?~データで読み解く不動産市況①~
- <第2回>ワンルームマンション投資意欲が伸び続ける理由~データで読み解く不動産市況②~
- <第3回>コロナショックで見えた、ワンルームマンション投資の安定感
- <第4回>首都圏投資マンション価格上昇はいつまで続くのか?
- <第5回>賢く不動産投資ローンを借りる2大ポイント~不動産投資積極派が増えている~
- <第6回>新型コロナウイルスの影響はどれくらいあったのか? 最新基準地価 東京23区の状況
- <第7回>データで見る「Withコロナ期」の不動産市況
- <第8回>2021年マンション投資を中心とした不動産市況予測
- <第9回>東京の賃貸住宅需要を支える興味深いデータ
- <第10回>不動産市況・マンション市況の好調がうかがえる3つの数字
- <第11回>最新! 2021年公示地価を読み解く。21年後半はどうなる?
- <第12回>コロナショックでも価格上昇が止まらない投資用マンション市場。不動産価格指数で解説
- <第13回>データで解説!2000年から現在の新築投資用マンション市況の変遷と今後の見通し
- <第14回>データで解説!ワンルーム&ファミリー物件の最新キャップレート分析
- <第15回>区分マンション投資で、これだけは知っておきたい融資の事
- <第16回>データで解説! 首都圏の新築投資用マンションの販売価格は今後どうなる?
- <第17回>データで解説! 最新(23年分)の都道府県地価調査結果の分析
- <第18回>データでみる!増える外国人居住者、賃貸住宅需要の下支えの構図
- <第19回>データで解説! 「いまが買い時?」投資用マンション価格は今後も上昇の可能性あり?
- <第20回>2024年の賃貸住宅投資市況の見通し—たとえ金利が上がっても影響は限定的?
- <第21回>2040年までの将来人口見通し発表! 賃貸住宅投資は首都圏物件の一択?
- <第22回>賃料上昇が投資マンション価格上昇分を吸収する?
- <第23回>マイナス金利解除でマンション投資市況に変化はあるのか?
- <第24回>「将来世帯推計」で見る、今後の賃貸住宅需要の変化
相続実務士
曽根恵子(そねけいこ)
- <第1回>お手本にしたい!樹木希林さんの家族を幸せにする不動産、遺言書の相続術!
- <第2回>3億円の財産が国のものに!おひとりさま、1人っ子は生きているうちに使おう!
- <第3回>40代の夫が急死。保険金でマンションを購入、家賃収入で不安のない生活ができる!
- <第4回>相続した空き家の実家を売却して賃貸マンションを2戸購入。資産の組み替え成功例!
- <第5回>現金を不動産に、経営は同族会社に。評価を下げて、財産を減らす相続対策成功例!
- <第6回>相続プランを作り、家族で相続対策に取り組もう!サポートは不動産実務家!
- <第7回>空き家状態の相続した実家を売却。その資金で区分マンション2戸購入し相続税を節税!
- <第8回>数よりも質。収益があがる不動産が財産となる
- <第9回>銀行預金だけでは危険!?相続時における節税対策とは
- <第10回>親任せにしたら財産は減るだけ!子供世代が対策しよう!
- <第11回>不動産を購入して、贈与すれば節税が加速する!
- <第12回>老人ホームに入るお金は残す必要がない!むしろ対策に使おう
ファイナンシャルプランナー
山口京子(やまぐちきょうこ)
住宅コンサルタント
野中清志(のなかきよし)