不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com
【第18回】データでみる!増える外国人居住者、賃貸住宅需要の下支えの構図
2023年10月
日本はすでに人口減少が進んでいる一方で、世帯数は一貫して増え続けています。その背景には、単独世帯の増加と外国人世帯の増加が大きな要因となっています。
住宅需要の見通しを推し量る重要な指標である世帯数ですが、「数」だけでなく、「どんな世帯が増えているのか」に着目してみると、住宅需要そして賃貸住宅需要の展望が推測できます。
世帯数の増加の状況を細かく見てみると、1人で暮らす「単独世帯」と海外から日本に移住してくる「外国人世帯」が増えていることが分かります。これらの世帯の過半は「賃貸住宅」に暮らしており、賃貸住宅需要を下支えしています。
単独世帯が増えている理由
単独世帯が増えている要因としては、人口ボリュームゾーンの高齢者夫婦の片方の死別があげられますが、それ以外にも生涯未婚率(50歳時未婚率)が増えていること(男性30%前後、女性20%前後)や離婚数の増加、婚姻時年齢の高齢化など昨今の世相を映している社会現象も大きな要因です。
最新の国勢調査によれば、単独世帯においては都市部では約7割、全国でみても6割以上の世帯が賃貸住宅(民営+公営)に住んでいます(総務省統計局「令和2年国勢調査」)。単独世帯は現在全世帯の36%前後で推移していますが、近い将来は全世帯の4割を超えると予測されています。
こうしてみれば、単独世帯の増加は、とくに都市部においては賃貸住宅需要を押し上げる大きな要因となり得ると言えそうです。
増える在留外国人
日本に住む外国人の数は(新型コロナウイルスまん延期を除く)、年々増えており、2022年末には史上初めて300万人を超えました。これも、後述するように賃貸住宅需要を押し上げる要因となっています。
法務省のデータによれば、令和4年(2022年)末現在の日本に住む外国人は307万5,213人で前年末に比べて31万4,578人(11.4%)の増加となり、過去最高を更新。初めて300万人を超え、日本人は人口減が続いている中で、人口減少を下支えしている状況といえます。また最新のデータである2023年6月末時点での外国人在留者は322万3,858人と、半年で15万人近く増えており、このペースでいけば、23年末には340万人近くに達することになりそうです。
図1は、2013年からの在留外国人数の推移を示しています。これをみれば、新型コロナウイルスがまん延した2020年・21年を除けば、一貫して増加していることが分かります。
在留外国人が住んでいる地域を都道府県別にみれば、22年末時点で最も多いのは東京都の59.6万人(全国の19.4%:21年比+12.2%)、以下愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県と続きますが、主要都市ではどこも増加傾向にあります。特に首都圏(一都三県)は、外国人居住者が多く、現在では130万人近い外国人が住んでいます。
人口移動の状況をみれば、外国人の都道府県を跨ぐ移動が増えており、都道府県を跨ぐ移動における転入者の外国人の割合では、一都三県では10%を超えています(図4)。日本人、外国人問わず移動に伴う転居においては、その多くの世帯が賃貸住宅に住みます。
22年末時点の外国人住民の世帯は177万2890世帯、1世帯当たりの構成人員数は1.69人となっています。21年末比では23万8807世帯(15.6%)の増加となっています。この間の全世帯(日本人・外国人合計)の増加数は50万5,253世帯でしたので、世帯数増の半分は外国人世帯の増加分ということになります。
外国人の賃貸住宅居住比率
それでは、外国人世帯は、どれくらいの割合が賃貸住宅に住んでいるのでしょうか。
少し古いデータですが、前回の国勢調査(2015年)に基づくニッセイ基礎研究所の推計によれば、外国人世帯のうち、民営の賃貸住宅に住む方が約50%、公営の賃貸住宅に住む方が10%、社宅などが6%と、約2/3がなんらかの賃貸住宅に住んでいることになります。ただ、これを一都三県に絞れば、6割弱の世帯が民営の賃貸住宅に住んでいるようです。先に述べた単独世帯の住まいの構成比と同じような傾向となっています。
まとめ
外国人への賃貸においては、文化や生活習慣の違い、言葉の壁、などネガティブに考える賃貸住宅も多いようですが、こうした状況を改善するため国土交通省もガイドラインやマニュアルを作成しています。
今後のとくに都市部での賃貸住宅需要においては、外国人世帯の増加が後押しすることは確実でしょうから、こうした波は確実にとらえておきたいものです。
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