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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com

【第23回】マイナス金利解除でマンション投資市況に変化はあるのか?


2024年3月

 日銀は3月18-19日に行われた金融政策決定会合で、マイナス金利政策解除することを決めました。これによりマンション投資市況はどう変わるのでしょう。

金融緩和政策解除の内容

 今回の決定で決まった主な内容は、以下のとおりです。

現在マイナス0.1%だった政策金利を0.1%に引き上げる
(実際は、ここでの金利の扱いを無担保コール翌日物レートにして0~0.1%に誘導)

長短期金利操作=イールドカーブコントロール(YCC)を止める
→ただし、長期国債の買い入れは継続

ETFとJREITの買い入れを終了する
→どのように売却等するかは、明確にせず。

 以上の3点が決まりました。

 これまで日銀は、2%の物価上昇(インフレ)が持続的に、安定的に達成できそうならば、マイナス金利政策を含む現在の金融緩和策の修正を行うと明言してきました。2022年以降、2%以上のインフレが続いていましたが、「この先も」どうかの見極めを行っていたようです。また支払賃金÷インフレ率で算出する、実質賃金がマイナスで推移していたこともあり、慎重に時期を見定めていたと思われます。
 そして、「安定的・持続的にインフレ率2%見通し」と判断したことに加えて、2024年の春闘では5%程度の賃上げが行われたことで、「大規模緩和の役割は終えた」という判断のようです。
 これにより、日本では2016年2月から導入されたマイナス金利(民間銀行が中央銀行に預ける当座預金の金利をマイナスとする)政策は、終了となります。異常時とも言えるような金融政策であったマイナス金利から、普通の金融政策へ転換したということになります。
 しかし、アメリカの政策金利が5.5%(3月分)、ユーロが4.5%(同)と比較すれば、修正後に0.1%となりますが、ほぼ金利は無いに等しい状況は続くことになります。
 また、イールドカーブコントロールについては、2022年年末から上限金利を徐々に上げており、超短期金利操作の撤廃を決めましたが、長期国債の買い入れは続けるということで、事実上大きな変化はありませんでした。

金利上昇でも円安・株高続く

 2024年年始以降、「市場と対話して反応を見る」ために、金融緩和政策決定会合に出席する政策委員会のメンバーによる、マイナス金利解除を匂わすコメントが出ており、それを株式市場・国債市場では、概ね受け入れるスタンスでした。
 そのため、修正発表後の反応は、すでに織り込み済みといえるものでした。また、政策金利の上昇が僅かであった事、長期国債の買い入れを続ける事などから、逆に「一定の緩和策は続ける」というスタンスが明確となり、株式市場は上昇しました。
 とくに、借り入れが多くなりがちで金利上昇すれば不安視されていた不動産関連ビジネスにおいて、不動産株やJREIT投資口価格は「大きな影響はない」との安堵の思惑から、決定後は、大きく値上がりしました。

 また、為替相場は多少円高に振れると見られていましたが、19日午後以降も円安傾向が続き21日のドル円相場は1ドル=151円程度で推移しています。これは、マイナス圏からプラス圏(0.1%)に上昇したものの、日米の金利差は依然5%以上あり、FRBは3月の会合でも金利を下げず維持を決めたことが影響しています。為替相場では、マイナス金利解除は、「誤差の範囲」とみているようです。

普通預金金利は20倍に!それでも0.02%

 19日の金融政策変更発表後に、メガバンクを含め多くの銀行が普通預金金利を上げることを表明しました。例えば三井住友銀行や三菱UFJ銀行では、19日に17年ぶりに普通預金金利を上げました。それまでの0.001%から20倍の預金金利引き上げですが、それでも金利は0.02%と「ほぼないに等しい」金利です。
 一方で、後述しますが住宅ローン金利や企業の借入金利は上昇の可能性が多少あります。

異次元から通常の金融緩和へ

 本来、中央銀行による利上げは、「金利を上げる」ことで、「需要を抑える」ように誘導し、「物価の安定を図る」という政策です。
 しかし、今回の政策変更は、「物価上昇率が安定的に2%を超える傾向が見える」と判断し、17年ぶりの利上げを行ったことで大きな変更といえます。しかし、現状の物価上昇は「需要を抑える」レベルではないことは、GDPギャップの数字をみても需要超過ではなく、支出増加が物価上昇につながっている状況とは言えません。
 そのため、政策変更の実態をみれば、金利上昇はわずかであり、依然超低金利状態が続き「異次元の金融緩和」を「通常レベルの金融緩和」に変更したというものと言えるでしょう。
 市場では、夏や秋にもう一段の金利上昇を予測(期待)する声が聞こえますが、現状のインフレ率の推移を見ていると、コアCPIはこのところ連続して伸びが低下しています。そのため、仮に年内にもう一度金利上昇があったとしても、ごくわずかな上昇となるでしょう。

賃料の上昇可能性がいっそう高まる

 今回の政策変更に際して、「2%以上の安定した物価上昇見通し」が見えてきた後に、日銀が最後まで数字に注目していたとされるのが、賃金の動向です。冒頭でお伝えしたように、春闘では賃金上昇率(ベアと定期昇給合計)が5%を超え、中小企業においても4%を超えるような状況です。
 物価上昇と賃金上昇が顕著となれば、少し遅れて家賃をはじめ不動産賃料上昇の可能性が高まります。「家賃は物価上昇に送れて上昇する」ことはよく知られたことです。また、賃金が上がれば、家賃に回すお金が増え、家賃上昇に耐えうる状況となり、不動産投資において好循環が生まれます。

マンション投資はどうなる?

 政策金利上昇は、短期プライムレート上昇につながり、ローン金利における変動金利上昇可能性があります。ただ、今回の金利上昇は、僅かなものでした。また、YCC撤廃に伴い、仮に長期国債金利が上がれば、固定金利が上昇します。ただ、こちらは過度に上昇すれば、その利払いが増え日本政府は大きな痛手となり、そのため日銀が買い入れを行うことを明言していますので、これまでの実態状況と大きな変化はないでしょう。
 その一方で、すでに家賃上昇傾向は顕著になってきていますが、かなりの確率でもう一段の上昇可能性があるものと思われます。このように考えれば、今回のマイナス金利解除は、マンション投資にはネガティブ要因にはならないものと思われます。

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