国際認定テクニカルアナリスト 横山 利香(よこやま りか)
金融系出版社で記者・編集者の経験を活かし、国際テクニカルアナリストとして株式や不動産を中心に資産運用をテーマに執筆活動を行うほか、セミナー講師としても活動中。自身で投資初心者向けの投資勉強会「投資力向上委員会」を主宰しているほか、個人投資家向けにYouTubeチャンネルも運営中。不動産好きが講じて、DIY女子としての一面も持つ。 https://yokoyamarika.com/
【第7回】不動産業界で進むDX化を取り入れて、入居者に選ばれる物件になろう!
■東京では人口流出がいまだ続く
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、2回目を完了した人が7割を超えました。G7諸国では1位になったという報道がありましたが、全国でワクチン接種が順調に進んでいることもあって感染者数の減少が続いています。感染者の減少とともに緊急事態宣言が解除され、徐々にではありますが行動宣言も緩和されてきたことで、人々に安心感も広がって経済活動が活発化し始めています。
新型コロナウイルス感染症が拡大する前の日常が戻りつつあることもあって、これまで休業や短縮営業を強いられてきた飲食店等では営業再開に向けての求人募集をしているようです。しかし、感染が終息に向かい始めている今、多くの業種が人手不足に陥っていることもあって、求人募集の状況に異変が生じているようです。リクルートが発表した10月の飲食店のアルバイト・パート時給(三大都市圏)は前年同月比2.4%増の1,050円になり、過去最高を記録したそうです。日本では以前から人手不足が懸念されていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が時給の上昇に拍車をかけた恰好です。
飲食店のアルバイト・パート時給(三大都市圏)が上昇する要因の一つには、東京都を中心に人口の流出が続いている状況があげられるでしょう。日本では首都圏を中心に緊急事態宣言が発令され、長く行動が制限されました。そうした状況を嫌気した人も多く、たとえば進学先を自宅の近くにする学生や、東京を離れて東京近郊や地方でテレワークする人も増加しました。総務省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京から転出する人が転入する人を上回る状況が続いていて、人口流出を表す転出超過の流れが続いています。
さらに、感染拡大防止のための水際対策として外国人の出入国が制限されていたため、これまで働き手となっていた外国人労働者が減少していることも、時給の上昇要因の一つとして挙げられるでしょう。こういう状況を見聞きすると不動産投資にネガティブな印象を持つ人も多いかもしれませんが、こうした状況を改善させることに期待が持てる明るい動きも出始めています。
■賃貸状況の改善に向かうか期待がかかる
ワクチン接種で先行していた諸外国では、外国人の出入国の制限を緩和する動きがすでに見られていました。日本でも感染者数が減少してきていることもあって、ようやくビジネス目的の短期滞在や留学生等を対象に、行動管理の条件つきではありますが出入国を認めることになりました。外国人労働者や留学生が増加すれば、人手不足が解消されることになるでしょうし、そもそも住むための家が必要になります。
また、首都圏では緊急事態宣言が発令されて以降、とくにIT企業を中心に職場環境にテレワークを取り入れる企業が増え、オフィスビル仲介大手の三鬼商事が発表したオフィスマーケットデータによるとオフィスビルの空室率が上昇を続けています。そして、オフィスの空室率の上昇が続いていることもあって、平均募集賃料は値下がりが続いている状況です。最近は感染者数が落ち着いてきたこともあって、テレワークの状況を縮小する企業も出てきているようですから、会社員が再び首都圏に戻ってくる可能性も考えられます。そう考えると、新型コロナウイルス感染症の影響をうけている今は厳しい状況かもしれませんが、今後は少しずつ賃貸状況がよくなってくる可能性が高いと考えられるでしょう。
■DX化を押し進めて入居者に選ばれる物件になろう
とは言え、ワクチン接種に先行した国では再び感染者が増加していることもあり、第6波への不安もあることでしょう。そうした不安を解消するために、今後は不動産の賃貸募集や賃貸管理等でDX(デジタルトランスフォーメーション)化がよりいっそう進み、DX化を進めていくことが顧客満足度の向上につながる可能性が考えられます。具体的には、不動産物件の管理や顧客管理、賃貸物件の内見対応や入退去の書類手続き、入居者や顧客対応へのチャットボット対応などといった多くの業務でDX化が進むことが想像されます。
最近では、インターネット通信設備を標準仕様として設置している不動産物件は当たり前になってきました。不動産物件にインターネット設備を提供しているアルテリア・ネットワークス(4423)やフリービット(3843)、ギガプライズ(3830)などがあげられます。また、不動産物件の玄関等の入退出を管理するスマートロック「Akerun」を手掛けるPhotosynth(4379)、賃貸物件の内見予約や申込受付等を提供するイタンジを手掛けるGAtechnologies(3491)や、不動産業者向けに管理システムサービス「賃貸革命」の提供を行う日本情報クリエイト(4054)やいい生活(3796)等があげられます。今後も不動産業界、不動産物件のDX化は成長を続けていくでしょう。
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