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国際認定テクニカルアナリスト 横山 利香(よこやま りか)
金融系出版社で記者・編集者の経験を活かし、国際テクニカルアナリストとして株式や不動産を中心に資産運用をテーマに執筆活動を行うほか、セミナー講師としても活動中。自身で投資初心者向けの投資勉強会「投資力向上委員会」を主宰しているほか、個人投資家向けにYouTubeチャンネルも運営中。不動産好きが講じて、DIY女子としての一面も持つ。 https://yokoyamarika.com/

【第8回】世界的なインフレの到来に不動産で備えるということ

■不動産価格の上昇がとまらない

 日本国内の不動産価格の上昇が止まりません。東京オリンピックが不動産価格のピークになってその後は下落するのではと言われていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行が想定外に長引いたことで在宅時間が増加し、少しでも広い家に住みたいと考える人が増えた影響もあるかもしれません。

 国土交通省が発表した「不動産価格指数」を見ると、住宅等を表す不動産価格指数(住宅)も、商業用等を表す不動産価格指数(商業用不動産)のどちらも上昇が続いています。どちらかといえば、新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめてから、不動産価格の上昇速度が少し早くなってきているようにも見える状況です。住宅用であれば上昇も納得がいきますが商業用もということですから、店舗や商業地等に落ち着きが出始めている状況を見ると、日本国内でも感染者数が減少するにつれて、新たな日常生活が動き始めているのかもしれません。


 不動産価格が上昇し続ける要因の一つとしては、ローン金利が長く低金利の状況で推移していることが考えられるでしょう。低金利の状況は日本に限ったことではありません。米国では新型コロナウイルス感染症の流行によって金融緩和政策を継続してきたこともあり、景気回復が鮮明になってきています。好調な経済指標が相次いでいることもあって、量的緩和の縮小が開始になりました。そして、連邦準備理事会(FRB)は2022年からの利上げを年3回行う予定であることを12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で発表しました。

■日本でも物価が上昇する可能性

 テーパリング(量的金融緩和の縮小)の加速を決めた米国の背景には、雇用環境の改善と、物価上昇が加速していることが挙げられるでしょう。なかでも物価上昇は十数年ぶりの水準となっていますが、原油価格等足元で資源価格の上昇が続いていること、グローバルに物流網が停滞したことによるサプライチェーンが寸断されたこと、そして、新型コロナウイルス感染症の流行がいまだ続いていることもあって労働力がそもそも減少し、その結果、賃金の上昇が続いていること等が背景に挙げられるでしょう。物価上昇の要因を見る限りでは、米国での物価上昇は対岸の家事ではなく、時間をかけて日本にも影響を及ぼす可能性が高いと考えることができます。つまり、新型コロナウイルス感染症の流行が皮肉にも日本の物価を上昇させる可能性があるということです。

 日本ではデフレ環境が長く続いていますが、資源価格等の上昇によって物の値段がじわじわと上昇し始めていて、価格上昇を吸収しきれなくなった多くの企業では上昇を価格に転嫁し始める動きが出始めています。この流れが続くと、日本でも今後、物価が上昇する可能性が鮮明となり、金利が上昇する可能性も出てくるかもしれません。そうなれば、現金の価値は下がり、物価の上昇に連動しやすい金融商品に投資しておかなければということになります。いまだ低金利の状況が続いていますから、不動産への投資も選択肢の一つとして考えておくべきなのかもしれません。

■物価上昇に負けない不動産を選ぼう

 ただ、人口の減少が続く日本で安定した不動産経営を行おうと思うと、長く安定した不動産価格の推移が期待できる三大都市圏の不動産に注目が集まる可能性が高いと考えられます。過去を振り返れば、仮に不動産価格が下落に転じた場合にはローン金利も低下する場合が多いと言えます。そもそも家賃はずっと下がり続けるわけではありませんから、賃貸募集への影響は軽微で済む場合がほとんどと言ってもいいでしょう。結局のところ賃貸需要が旺盛な地域の不動産価格は値崩れが起こりにくいのは、安定した賃貸経営ができるからということになるのかもしれません。足元は特に東京からの人口流出が止まりませんが、長い目で見た場合、不動産投資は値崩れが少なく、賃貸需要が旺盛な三大都市圏がやはり有利だと言えるのではないでしょうか。
 実際、大都市圏を中心に不動産販売を行っている企業の多くが順調な業績となっています。物価上昇を背景にさらなる業績好調の流れを引き続き継続できるのか注目でしょう。
 世界的にインフレが進めば、現金の価値低下はどうすることもできません。インフレに打ち勝つ金融商品の一つとして不動産を検討する場合には、不動産価格の推移に加え、家賃の推移等も検討しておくといいかもしれませんね。

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吉崎 誠二

不動産エコノミスト
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