

国際認定テクニカルアナリスト 横山 利香(よこやま りか)
金融系出版社で記者・編集者の経験を活かし、国際テクニカルアナリストとして株式や不動産を中心に資産運用をテーマに執筆活動を行うほか、セミナー講師としても活動中。自身で投資初心者向けの投資勉強会「投資力向上委員会」を主宰しているほか、個人投資家向けにYouTubeチャンネルも運営中。不動産好きが講じて、DIY女子としての一面も持つ。 https://yokoyamarika.com/
【第9回】米国のインフレがJ-REIT市場に与える影響
■インフレが急激に進む米国の影響を受けてJ-REITが下落
米国ではインフレの沈静化の見通しがたたない状況です。米労働省が先日発表した2021年12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年同月比7.0%となりました。1982年6月以来、約39年ぶりの高い数値となりました。インフレが急激に進んでいることもあって金融引き締めを加速させるために、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを加速させるのではとの見方が強まっています。これを受けて米国10年債利回りは一時1.9%台まで急騰し、コロナショック前の2019年末の水準まで上昇する動きとなりました。
コロナショック以降、金融緩和によって米国10年債利回りは低い水準での推移が続いていましたが、利回りが上昇すれば債券投資を魅力的だと考える人もいることでしょう。日本でもこの影響を受けて、J-REITが下落する動きとなっています。J-REITとは不動産に投資する投資信託のことです。ここ数年、不動産価格の上昇が続いていることで、少額から不動産に投資できることから人気を集めている金融商品の一つです。現物の不動産投資では、不動産価格の上昇に加え、定期的に得られる家賃収入が人気を集めていますが、J-REITでも価格上昇と分配金を受け取れる点が人気を集めています。
■オフィス系は価格下落の一方で、住宅系は堅調に
しかし、このJ-REITには、オフィス系や商業施設系、住居系等、日本国内には数多くの種類があります。世界各国でオミクロン株の感染が猛威をふるっていますが、日本国内も同様です。長く続いた自粛生活が終わり、ようやく経済活動再開かと期待が高まっていたところで、東京をはじめとして都県でまん延防止措置が発令されることになりました。三鬼商事が調査した「オフィスマーケットデータ」によると、東京のビジネス地区(都心5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)は12月時点の平均空室率が6.33%となり、ようやく落ち着きを見せていたところでした。しかし、再びまん延防止措置が発令されることで空室率も高止まりが続く可能性が考えられます。空室率の上昇とともに、平均賃料は下落がいまだ続いている状況で、下げ止まりの状況にはなっていません。
J-REITを表す指数としては東証REIT指数がありますが、2021年は金融緩和を背景に上昇が続きましたが、米国の金融引き締め、そして、コロナ禍の長期化によってオフィス系等を中心に不動産市況への懸念等が高まり、価格が下落しているのです。しかし、オフィス系の空室率は高止まりの状況が続いていますが、賃貸住宅では少しずつ動きが出てきているのも事実です。アットホームが調査した「平均募集家賃」によると、2021年はアパートの平均募集家賃は上昇傾向にある他、マンションでもディンクスやシングルでは下落傾向ですが、ファミリーや大型ファミリーでは上昇傾向にあるとのことで、首都圏では上昇エリアも目立ってきているようです。
■インフレの進行、低金利の維持が続く中でますます注目が集まる不動産投資
米国ではインフレが続いていて、いずれその波は日本にも押し寄せるかもしれません。そうなった時、インフレに対応できる金融商品として不動産にますます注目が集まる可能性も考えられます。日本では低金利が続いている状況ですから、市況に好調の兆しが見られる住宅系の不動産への投資は選択肢の一つとして考えておいてもいいかもしれません。
そこで、今回はJ-REITの中から住宅系を中心に投資を行っている銘柄をご紹介したいと思います。日本アコモ(3226)や、アドバンス・レジ(3269)、スターツプロシード(8979)、コンフォリア・レジ(3282)、サムティ・レジ(3459)等が挙げられます。住宅系はオフィス系や商業系に比べると分配金の利回りが低くなりがちですが、今後コロナ禍が長引くといったリスクは小さいですから、そういった視点で考えることも今後は必要になってくるかもしれません。さらに、インフレが進むほどに不動産の投資先の選別も進むかもしれませんので、有望な投資先を普段から検討しておいたほうがいいかもしれませんね。
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