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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com

【第1回】新型コロナウイルスが不動産市場に与える影響は?~データで読み解く不動産市況①~

―不動産市場に影響を与える3つのエネルギーとは?
―現在の不動産市況の俯瞰
―JREIT指数で見る不動産市況
―住宅賃料の今後の見通し
―浮き彫りになるワンルームマンション投資のメリット

不動産市場に影響を与える3つのエネルギーとは?

 コロナショックは不動産市場にどのような影響を与えるのでしょうか。不動産市場に影響を与えるものには3つのエネルギーがあるとされています。小さな波から大きなうねりまで、影響の大小は振れ幅の大きさとも言えます。

 1つ目は、株価の変動や統計の発表など、日々世界中で起こる様々な変化に影響するものです
 2つ目は、短期・中期的サイクルというエネルギーです。1~3年程度の期間の中で生まれ、例えば「オリンピックの経済効果が不動産市場に影響を与える」などが該当します。
 3つ目は、長期的な事象によるエネルギーです。3つの中で一番大きな振れ幅が大きく、人口の変動(高齢化、人口減少等)や気象の変化等がこれに該当します。
 今回のコロナショックは3つの変動エネルギーのうち「短期・中期的サイクル」に当たります。

現在の不動産市況の俯瞰

 では、現状の不動産市況はどうなっているのでしょうか(執筆時点:2020年5月21日)。
 不動産市況(とくに実物不動産の市況)は、株式市場とは異なりタイムリーなデータがなく、たいていのデータが数か月後に公表となりますので、詳細な実態をデータで把握するにはもう少し時間を要します。(5月下旬には3月分が出始めます)
 緊急事態宣言が出されて以降、多くのデベロッパー・ハウスメーカーあるいは不動産会社は、実質的に新規の営業をストップ(営業行為=接触行為の自粛)しており、営業担当者も在宅勤務をしている状況です。そのため、レインズデータなどを見ていると4月の取引件数は前年の半分程度だった模様で、現状の「不動産市況はあまり良くない」と言わざるを得ません。しかし、各デベロッパーや不動産仲介会社、ワンルームマンション会社、不動産ファンドの方々とお話していると、水面下では取引が行われているようです。価格もそれほど大きな落ち込みはないものの、事情はプロパティ毎に異なっているようです。

JREIT指数で見る不動産市況

 次にタイムリーなデータが見れるJREITの動きを見てみましょう。
過去の実例から判断すると、不動産証券化商品であるJREITの動きは、実物不動産の動きの先取りとも言えます。具体的には、概ね1年くらいのタイムラグで相関がみられます。

 上図は、2020年1月~5月15日までのJREITの各指数です
JREITは2月20日ごろまでは高値で推移していました。しかし、2月最終盤からジワジワと下がりはじめ、3月19日には大きく値を下げました。JREIT指数でみると、2月の平均対比で最も下げた時点では住宅指数が57%、商業系が52%、オフィス系では50%となりました。
 その後は、いくぶんもどしており、4月の平均では住宅系は82%、商業系71%、オフィス系は65%となっています。注意が必要な事として、商業・物流等指数で、このうち最も下げた時点でホテル系は30%、小売り系は35%と最もひどく、逆に物流系の落込みは僅かで80%という状況でした。つまり、不動産の分野ごとに大きな違いがあるという事です。
 JREIT指数だけで見ると、最も状況がいいのは物流系で、つづいて住宅系、以降は厳しい状況で、オフィス、小売り(商業)、ホテルの順となっています。物流施設は、お分かりのように、昨今のEC(ネット通販等)の進展に加えて、外出自粛のため通販が増えているからです。

住宅賃料の今後の見通し

 次に、住宅賃料について検討してみます。
 賃料は需給のバランスで決まります。住宅賃料はこれに所得(雇用状況)も多少影響します。
 結論から述べますと、コロナウイルスショックは、今後の住宅賃料にそれほど大きな影響はないと思います。長期的に見てこれまでの日本の住宅賃料はインフレ連動していますが、景気低迷期に目立った値下げは起こしていません。しかし自粛ムードが長引くとすれば、ある程度の高額(概ね25万円以上)賃貸物件賃料は下がる可能性があります。個人事業主、経営幹部層がメインターゲットの物件では所得の減少可能性があり需給バランスが崩れる可能性があるからです。

浮き彫りになるワンルームマンション投資のメリット

 逆に、ワンルームマンションとくに都市部のワンルームマンションの賃料ですが、需給バランスで考えると、ほとんど下がることはないと思います。理由としては、需要がかなり旺盛な状況が続いており、その傾向はこの先(よほど大きな天災でもなければ)長期的に続くこと、そして供給が大きく増えることがないことがあげられます。
 つまり、コロナショックでも需給バランスに大きな変化がないという事です。また、メインターゲットの若年層~30代の所得にも大きな変化はないと思われます。
 仮に、ネガティブに見るとすれば、短期的にみれば、来年あたりもしかすると僅かに下がるかもしれませんが、限定的かつ一時的にとどまり、すぐに回復、そして上昇基調になると思います。
 リーマンショック後2009年、10年あたりに民間賃料は(全国平均では)僅か1%程度下がりましたが、11年に入ると回復しています。また、都市部ではほとんど大きな変化がありませんでした。こうしたことから考えると、来年あたりにほんの少し下がる可能性がなきにしもあらずですが、限定的かつ一時的にとどまり、すぐに回復するものと思われます。

 オフィス賃料・商業施設賃料も、需給バランスで決まります。そして振れ幅が大きく、賃料は上下します。このあと半年経つ頃から、商業施設(小売り・飲食系)需要は大きく落ち込む可能性が高く、商業施設賃料は下落基調になる可能性は極めて高いと思います。

 オフィス賃料ですが、現在コロナウイルスのためテレワークが進んでおり、かつ今後も政府は対策のためテレワークを推進しています(もともと、働き方改革で推進していました)。しかし、足元での大都市部でのオフィス空室率は極めて低く、賃料も高止まりしています。 
 アフターコロナの「働き方」しだいでは、それほど床面積が必要なくなり賃貸は下がる可能性もあります。もし、あまり大きな変化がなければ、オフィス賃料はもうしばらく高止まりすると思います。
  
 こうして検討すると、市況ムードが良くない時ほど、都市部でのワンルームマンション投資のメリットが浮き彫りになることでしょう。
 

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