

国際認定テクニカルアナリスト 横山 利香(よこやま りか)
金融系出版社で記者・編集者の経験を活かし、国際テクニカルアナリストとして株式や不動産を中心に資産運用をテーマに執筆活動を行うほか、セミナー講師としても活動中。自身で投資初心者向けの投資勉強会「投資力向上委員会」を主宰しているほか、個人投資家向けにYouTubeチャンネルも運営中。不動産好きが講じて、DIY女子としての一面も持つ。 https://yokoyamarika.com/
【第11回】金利上昇時の不動産投資をどう考えるか
■米国利上げの余波が日本にも及ぶ
米国で先日発表された2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.9%増とおよそ40年ぶりの水準となり、インフレが進行していることが明らかになりました。米国では2022年3月頃から利上げを行うことが昨年末から明らかになっていましたが、2022年3月にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、0.25%の利上げと、2022年中に7回程度の利上げを行うことが発表されました。日本でも多くの商品やサービスの値上げが発表されていますが、世界各国でインフレが進行している状況になっています。
米国で利上げが行われる状況を受けて、日本でも長期金利の指標となる10年国債の利回りが2021年頃から少しずつ上昇し始めていて、6年ぶりに0.2%台まで上昇しています。(2022年3月現在)日本国内では金融政策の一環として、長らく長期金利がゼロ付近で推移してきましたから、不動産を購入する際に利用することになる金利が今度どう推移するのかと、上昇の行方を気にしている人が増えてきている状況です。
■値上がりが続く不動産価格
金利が上昇すると返済額が増えることになりますから、不動産の購入を躊躇する人が増えると考えるかもしれません。しかし実際には、不動産を購入したいと考える人が減少することはなく、不動産価格の上昇が続いています。 国土交通省が発表した「不動産価格指数」を見ると、住宅総合やマンション(区分所有)は2021年も上昇を続けていることがわかります。もちろん、新型コロナウイルス感染症の感染拡大でテレワークが普及してきていることで、不動産を購入したいと考える人が増えた影響が大きいと言えるでしょう。「安くなったら購入したい」等と考えている間にどんどん値上がりしている状況ですが、東京都区部ではしばらく不動産価格は高値圏での推移が続くかもしれません。
国土交通省が発表した「不動産価格指数」
というのも、不動産経済研究所の「首都圏・近畿圏マンション市場予測ー2022年の供給予測ー」では、2022年は東京都下や埼玉県、千葉県では、2021年に対して供給戸数が増える傾向にありますが、東京都区部では1.4%ほど供給戸数が減少するのではとされているのです。供給戸数の減少については、建築資材や人件費の高騰等に加え、コロナ禍でマンションを購入したいと考える需要の先食い、さらに、在庫数が2015年以来の低水準で推移している点も少なからず影響を及ぼしているのではないかと思われます。
次に、東日本不動産流通機構の「月例速報2022年2月度」では、中古マンションの成約㎡単価と成約価格は、2020年6月から21カ月連続で前年同月比で上昇が続いています。そして、在庫数が2019年11月以来27か月ぶりに前年同月比を上回る状況となっています。どちらかと言えば、古くてもいいので割安感を求めて中古物件の購入を検討する人が多いでしょうから、不動産価格上昇の影響が出ている可能性が考えられるでしょう。
■4ヶ月ぶりに上昇した東京23区の分譲マンション賃料
不動産価格の上昇が続いている中、コロナ禍、首都圏の分譲マンションの賃料はどのように推移しているのか確認をしておきましょう。東京カンテイの「築年帯別分譲マンション賃料の推移2022年」によると、4カ月ぶりに上昇したとのこと。築年数が浅い物件が増加したことが要因との分析でしたが、個人的には、長引くコロナ禍に人々が慣れ始めて引っ越しの動きが活発になってきた、さらに、オンライン一辺倒の生活から変化が出てきているのではないかと考えています。
東京カンテイの「築年帯別分譲マンション賃料の推移2022年」
■低金利が不動産価格上昇のメリットを大きくする
これらを踏まえて、金利上昇への懸念が高まる中、不動産の購入時期としてはいつが最適なのかを考えると、金利上昇への懸念はありますが、不動産価格と不動産賃料は上昇基調にあるため、できるだけ金利が安い時に購入したほうがよく、不動産価格上昇のメリットを受けやすと考えられるでしょう。万一金利が高くなった場合、経済が好調なら不動産価格も上昇している可能性が考えられるでしょう。一方、金利上昇に経済状況が耐えられずに不景気になっていた場合、金利は低下し始める可能性がありますが、不動産賃料は築年数に応じた下落の程度でしかありません。この場合には利回りがアップする可能性が考えられます。
ただし、家賃収入は入居者がいてくれてはじめて入金されますから、入居者に選ばれる物件であることが大切です。全国賃貸住宅新聞が調査した入居者に人気の住宅設備は、コロナ禍ということもあってインターネット無料や、宅配を確認するためのTVモニター付きインターホン、室内洗濯機置き場等が人気のようですから、最低限の設備として備え付けておきたいものです。
さらに、米国をはじめ諸外国で進むインフレの波はいずれ日本にも押し寄せることでしょう。そうなった時、インフレに対応できる金融商品として不動産にますます注目が集まる可能性が考えられます。日本ではいまだ低金利の状況が続いていますから、住宅系の不動産への投資は選択肢の一つとして考えておいて損はないでしょう。コロナ後、そしてインフレを見据え、有望な投資先を普段から検討しておいたほうがいいかもしれませんね。
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