【第4回】 不動産投資戦略(その4)将来の資産価値が劣化しない立地とは? -その2-
長谷川高
長谷川不動産経済社代表。
デベロッパーの投資担当として企画開発事業に携ったのち1996年に独立。
以来一貫して、個人・法人の不動産に関するコンサルティング、調査、投資顧問業務を行う。
講演やメディアへの出演を通して、不動産の市況や不動産購入・投資術をわかりやすく解説している。
著書
『愚直でまっとうな不動産投資の本』(ソフトバンククリエイティブ)、
『不動産投資 これだけはやってはいけない!』(廣済堂出版)
『はじめての不動産投資』 (WAVE出版)など。
【第4回】
不動産投資戦略(その4)将来の資産価値が劣化しない立地とは?
-その2-
今回、将来において資産価値が劣化しない立地を、異なる角度から検証したいと思います。
3.11の東日本大震災以後、東京における旧山の手の住宅地が見直されてきているように思います。
東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害をもたらしましたが、この惨状をテレビやインターネットで目に焼き付けた方は多いと思います。首都圏ではJRをはじめとする私鉄各社が運休し、大勢の人が道路という道路に溢れていたことを目の当たりにしたと思います。
そういった衝撃的な経験をした私達は、これからの時代、「何が起きるか分からない時代である」点と「何が起きてもそれに備える必要がある時代である」ことを誰もが認識したと思います。
この大きな出来事は不動産の売買、賃貸、投資の世界にも少なからず影響を与えました。
この震災において、交通手段がマヒした為、多くの方が都心のオフィスから徒歩で数時間もかけて帰りました。しかし、中には30分以内、1時間以内で自宅までたどり着いて、その後の様子をテレビで見ていた方も多く存在します。
私の友人が東日本大震災の当日、電車が全て止まった中、小石川のマンションまで「赤坂から歩いて1時間で帰ったよ」と言っていました。
渋谷区南平台に住む先輩も「道が混む前に車で日比谷から30分で帰ったよ」と。
今の20代や30代の方には、青葉台、南平台、松濤、音羽、小日向、小石川、西片、千駄木、元麻布・・・・と言ってもあまりご存知ない方も多いと思いますが、青葉台には美空ひばり邸、南平台は三木武夫邸、松濤は旧鍋島邸、音羽は鳩山邸・・・
これらの地域は当然ながら地価も高いのですが、その多くは古い時代からの台地で非常に地盤も良く、液状化等が起こり難いエリアであるのです。地盤が良いということは震災時にライフラインが損傷するリスクが少ないことを意味しています。更には、東京のオフィス街から歩いても1時間以内で帰ることができ、安心して生活ができる訳です。
渋谷区の高級住宅地に住む先輩が、
「昔からの高級住宅地は、(若い方にあまり知られていなくとも)そこが高級である理由がちゃんとあるのだよね」
と言っていましたが、おっしゃる通りかも知れません。
私も購入者や投資家に代わって不動産を調査していると、やはり、と申しますか高級住宅街であった旧山の手エリアや古くからの高級住宅街は歴史的(縄文時代から)にも地盤が極めて良いことが分ります。
これらの地域はほとんどが「古い時代に形成された台地」の上に存在しています。
しかし、近年では極めて人気の高い地域でも必ずしも震災に強いとはいえない地域が含まれていることも事実です。
ゆえに、今後も「大きな震災は起こる前提」で立地を選び、不動産に投資すべきだと思います。
賃借人に取っても、
「いざという時に容易に自宅にたどりつくことが可能なのか?」
「自分のオフィスからどれくらいで歩いて帰ることができるか?」
「大地震の時に地面が液状化しないか?」
「大震災の時に建物自体が倒壊する心配はないのか?」
といったことは、今や誰でも考えることのなのです。
投資家にとっても、投資した物件の地域が液状化を起こしてしまいますと、水道や電気が使えなくなるリスクを抱えることになります。仮にそうなりますと、賃借人は他の「普通に暮らせる家」を探して当然退去することになります。この場合、最悪数ヶ月に渡って、賃料収入が入ってこないことになりかねません。
不動産に投資する側も大震災等に関しても
「起こり得ないと思っていたことが起こる時代」
「数百年に一度しか起こらないと言われていたことが起こる時代」
ということを肝に銘じて、そういったリスクに備えて、安心な立地に存する物件を選ぶべきかと思います。
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野中清志(のなかきよし)
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