ファイナンシャルプランナー 大竹 のり子(おおたけ のりこ)
編集者を経て2005年4月に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。 現在、雑誌、講演テレビ・ラジオ出演などのほか、女性FPによる個人マネー相談や人生の“やりたい”を“できる”に変えるための「お金の教養スクール」を運営中。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)『老後に破産しないお金の話』(成美堂出版)など著書は70冊以上に及ぶ。https://www.fpwoman.co.jp
【第12回】不動産投資と家計の未来を考える
不動産投資は、毎月の安定した家賃収入と現物資産ならではの安定した価値という両面から、将来に向けて資産を形成していくうえでとても心強い味方と言えます。最終回の今回は、そんな不動産投資が家計の未来に何をもたらしてくれるのかを一緒に考えていきましょう。
■「もうひとつの収入源」としての存在価値
転職が当たり前になり、年功序列・終身雇用が終焉を迎えつつある時代。思うように収入が増えない中で、ダブルワークや副業への関心が一気に高まっています。そんな中にあって、給与収入とは別の「もうひとつの収入源」として注目されているのが不動産投資です。
不動産投資の魅力は多岐に及びますが、筆頭に挙げられるのは、毎月の安定した家賃収入でしょう。他の資産運用と比較をするとよくわかりますが、例えば株式投資の場合、毎月安定して利益を上げ続けることは容易ではありません。でも不動産投資であれば、退去時は別としても、入居者がいる限り、毎月同じ金額の収入を得ることができます。
区分マンションの場合、1物件だけでは給与収入には到底及ばないかもしれませんが、2物件、3物件と増やしていければ、将来的には給与収入に勝るとも劣らない毎月の収入となるかもしれません。また、物件数が増えれば増えるほど、入居者の入れ替わりがあった場合でも安定した収入が得られるようになってきます。
また、「働かなくても収入が得られる」というのも大きな魅力です。給与収入は「自分が働く」ことが前提となっているので、もしも病気や怪我で働けなくなってしまったら収入も得られなくなってしまいます。会社員や公務員の方であれば傷病手当金などの社会保障もありますが、収入そのものは減ってしまいますし、加えて医療費もかかります。特に独身の方や、お子さんが小さく奥様がフルで働くことが難しいご家庭にとって、「働かなくても収入が得られる」不動産投資の存在価値は大きいと言えるのではないでしょうか。
■節税ができることで手取りが増える
「働かなくても収入が得られる」以外のメリットもあります。それが、「節税ができることで手取り収入が増える」ということです。
会社員の場合、所得税などの税金を計算するうえで個別に必要経費を計上し、収入から差し引くことは基本的にできません。その代わりとして「給与所得控除」という一定の控除が認められているわけです。でも、収益不動産を購入し、不動産収入を得ることによって、必要経費を計上する「権利」を得ることができます。経費には、物件を見に行くためにかかった交通費、勉強するためにかかった書籍代や受講料なども一般的に計上できますが、特筆すべきは「減価償却費」です。
「減価償却費」とは、建物などの固定資産の購入にかかった金額の全額をその年の経費とするのではなく、耐用年数に応じて分割し、経費に計上していくものです。実際にその金額を支出したわけではなくても経費として計上されるのが「減価償却費」の特徴です。
多くの場合、この「減価償却費」があることによって、数字上は家賃収入よりも経費のほうが多くなり、結果的に不動産所得がマイナスになります。このマイナスと給与所得を損益通算することで、結果的に給与収入から差し引かれた所得税の一部が還付になり、手取り収入が増えるというわけです。還付金を臨時収入として貯めていくのも貯蓄のひとつの方法ですね。
■将来的に売却すればまとまったお金に
そして、不動産投資の魅力は、収入が増えたり、節税効果によって手取りが増えたりといった、目の前の家計へのプラスの影響だけではありません。毎月ローンを返済していけば負債はちょっとずつ減っていき、いずれはなくなります。家賃収入からローン返済にまわすお金が不要になれば毎月の手残りがぐんと増えるので、それを老後のゆとり資金に充てることもできます。
また、お金が必要になったときに物件を売却すれば、数百万〜1千万円を超えるまとまったお金が手に入ります。老後を快適に暮らせる民間の老人ホームの入居金に充ててもいいですし、これまで仕事や子育てを頑張ったご褒美として世界一周旅行をするのもいいですね。個人的には、このお金を元手に、それまでの不動産投資で培った知識や経験も味方につけて1棟アパートを購入し、悠々自適な大家さんになるというのもおすすめです。
もちろん、他の資産運用もそうであるように、不動産投資にもリスクがつきものです。決して小さくはない投資だけにその判断にも慎重さが求められます。でも、その特性をマネープランの中で上手に組み込むことができれば、家計に安定とゆとりをもたらし、人生の選択肢を増やしてくれるのです。
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