
相続実務士 曽根 恵子(そね けいこ)
【相続実務士】の創始者として1万4,500件の相続相談に対処。(株)夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。出版書籍53冊、累計39万部出版、TV・ラジオ111回出演、新聞・雑誌取材協力425回、セミナー講師実績500回。(2019年5月時点) https://www.yume-souzoku.co.jp
民法改正の特集。「さんまのホンマでっか!?TV」「スッキリ」に出演
「2018年7月に相続に関する民法の改正が行われ、秋ごろから「週刊現代」「週刊文春」「週刊ポスト」「女性セブン」「女性自身」などの週刊誌が特集を始めています。私も各誌に取材協力をさせて頂いており、毎週、どこかの誌面に私のコメントが掲載されています。新聞や雑誌への取材協力は440回を超えました。
相続に関する民法の改正については、総務省のホームページなどで紹介されていますが、(www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html)やはり、一般の方にはすぐにはわからないところでしょう。そのためもあり、週刊誌ではわかりやすく解説をしながら、読者の方に紹介していこうと特集が組まれています。同様にテレビでも取り上げられており、私も2018年11月にはフジテレビのバラエティ番組「さんまのホンマでっか!?TV」や読売テレビの情報番組「スッキリ」に出演して民法の改正に関わる解説や事例をお話しさせていただきました。
3億円の財産を残して孤独死
ご両親の相続税の申告や賃貸併用住宅の建築のコーディネートをさせていただいたI様が昨年、孤独死されました。70歳の男性です。独身で、自宅でひとり暮らしをしておられました。新聞がたまっているのを配達員が不審に思い、警察に通報して、室内で亡くなっているのが発見されたのです。
I様は、8年前に父親が亡くなったときに、書籍を読んで私のオフィスに相談に来られました。父親の財産は、120坪の土地に自宅、アパート、貸家、駐車場があり、預金など合わせると3億円ほどになり、相続税の申告が必要でした。相続人は母親とI様の二人で、配偶者の特例を生かすようにして節税しました。
合わせて母親の二次相続対策のために自宅を建て替えることをご提案しました。豪華な自宅はいらないと言って、賃貸併用住宅にされました。母親の生活を考えると自宅は1階として、1階1部屋、2階3部屋の賃貸住宅が出来上がりました。建築費は借入することなく、所有する母親の現金を充てられました。現金を建物に変えるだけでも半分以上も評価が下がり、節税効果が高いのです。建て替えた自宅は快適だと喜んでおられました。
質素な生活スタイルが変えられない
母親はほどなく亡くなってしまい、I様はいよいよひとりになってしまわれたのです。父親の相続手続きのときに知ったことですが、I様には弟さんがおられました。けれども、その弟さんは独身で、40代後半に父親よりも先に亡くなっていたのです。よってご両親が亡くなった後は、おひとりさま、1人っ子の状態でした。
I様は65歳まで会社員として勤務して、その後はリタイヤされましたが、年金と家賃収入が入ります。それ以上にどんどん使って財産を減らすことも生き方のひとつですので、旅行や趣味にどんどん使いましょうともアドバイスしていました。
I様は不動産だけでなく、預金も1億円近くお持ちなのに、車を買い替える時も、国産車。ご両親も質素な生活をしてこられたようで、そうした生活が身についているのでしょう。財産を残す相続人がいない状況ですから、もっと割り切ってどんどん使ってしまうようにされてもいいのにと思っておりましたが、使われないので減る要素がありませんでした。
年間440憶円もの財産が国のものに
相続人は原則、配偶者と子どもです。両方いないおひとり様の場合は両親か祖父母が相続人です。I様のように、両親も祖父母も亡くなっていて、しかもきょうだいもいない、1人っ子の場合は、相続人がいないことになります。最近では、こうした人が増えているのです。
相続人のいない財産は、国に帰属するため、国のものになりますが、最近では年間約440億円もの財産が国に帰属している状況です。
身の回りのお世話をしたり、関わりのあった親族などは、家庭裁判所に「特別縁故者」として財産の一部をもらいたいという申請をすることはできますが、そもそも財産管理人になる弁護士の選任などが必要で、手続きには100万円以上の費用がかかり、時間もかかります。そうすることで亡くなった人の財産がすべてもらえるかというと、認めてもらえるのは財産のほんの一部ですので、結局は大部分が国のものになるのです。
おひとりさま、1人っ子が自分の意思を生かすには、「遺言書」の作成が必須となります。そうすることで親族へも迷惑や手間をかけずに済むのです。
若いうちに遺言書を書いておこう。民法改正で遺言書は作りやすくなる
誰でも自分の寿命はわからないものです。いつ何があるかもわかりません。まだ先と思わずに、若いうちに遺言書を作成して、自分の意思を残して財産の渡し方などを決めておきましょう。そうすれば自分の気持ちも落ち着いて、長生きできるかもしれません。
法的に間違いのない「公正証書遺言」がおススメで、当社で承認業務を担当してサポートしていますが、公証役場と証人の費用が必要になります。費用はかけずに自分で作りたいという場合、自分で書いた「遺言書」を2020年より法務局が保管してくれるように民法が改正されました。家庭裁判所の検認も不要になりますので、遺言書が作りやすくなります。財産目録もワープロ打ちや不動産の登記証明書や通帳の写しの添付も認められます。
ただし、自分で書く遺言書は、おひとりさまの場合、家に保管しておいても発見されないケースもあります。法務局に保管してもらうと同時に、財産を渡す人(受遺者)か、遺言を実行してくれる人(遺言執行者)に知らせておくようにしましょう。
自分の財産は自分のために使っていい時代!趣味、起業、ボランティア、寄付など
いまから思うと、遺言書はI様の考えがまとまるまで待とうと、先延ばしにしてしまいましたが、もっと強くおススメしおくべきだったと残念に思っています。
遺言書に残す人が決められないくらいであれば、自分の財産は自分のために使っていい時代ではないでしょうか。趣味、起業、ボランティア、寄付などなど、思いつく限りのことに活用しても誰に咎められることもない時代です。
最近では高齢の方の婚活も流行っていますので、年代問わず、いい出会いの機会も増えています。配偶者ができれば、老後の不安もなくなり、相続の不安も解消されるのですから、I様も一度くらいはチャレンジして結婚してみるというセレモニーを経験されてもよかったのにとも思いました。
生き方も、生活スタイルも、財産の持ち方、使い方、相続の仕方、時代により少しずつ変わっていますし、自分スタイルに変えてもいい時代。後悔のない選択をおススメしたいとあらためて思っています。
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