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ファイナンシャルプランナー 大竹 のり子(おおたけ のりこ)
編集者を経て2005年4月に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。 現在、雑誌、講演テレビ・ラジオ出演などのほか、女性FPによる個人マネー相談や人生の“やりたい”を“できる”に変えるための「お金の教養スクール」を運営中。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)『老後に破産しないお金の話』(成美堂出版)など著書は70冊以上に及ぶ。https://www.fpwoman.co.jp

【第2回】「じぶん年金」づくりと不動産投資

2019年に金融庁のワーキング・グループの報告書に端を発した「老後2,000万円問題」が社会的なニュースになったことに象徴されるように、公的年金だけで老後の生活費を賄うことが難しいというのはいまや世間共通の認識です。そこで注目されているのが、公的年金とは別に自分で上乗せ分を準備する「じぶん年金」です。そこで今回は「じぶん年金」づくりにおいて不動産投資がどのように活用できるのかを考えていきたいと思います。

■「じぶん年金」づくりの選択肢

 「じぶん年金」をつくらなければ、と思ったとき、皆さんはどのような方法を思い浮かべるでしょうか。定期預金や財形年金貯蓄で積立をする、つみたてNISAやiDeCoを活用して投資信託の積立をする、個人年金保険など貯蓄型の保険に加入するなどその選択肢は多岐に渡ります。
 活用する金融商品こそ違えど、これらの選択肢にはある共通項があります。それは、「老後に向けて毎月コツコツとお金を積み立て、お金が必要な時期になったらそれを取り崩していく」ということ。積み立てた元手の増え方や非課税措置、保障の有無などには違いがあるものの、この「積み立てて、取り崩す」という点は同じなのです。

■2,000万円問題を数字で考えてみると…

 では、実際、老後までに2,000万円を準備するには、毎月いくらぐらいを積み立てる必要があるのでしょうか。
 仮に現在35歳で65歳までの30年間で2,000万円をつくるとした場合、年利回りが0.1%なら毎月5.5万円の積立が必要になります。投資信託などで3%の年利回りが実現できれば、毎月の積立額は3.5万円と大幅に少なくて済みます。
 一方の取り崩しについてですが、冒頭の金融庁のワーキング・グループの報告書では、2017年時点での高齢夫婦無職世帯の平均収入から、平均的な支出を差し引いた毎月の赤字である5.5万円を30年分で掛けることで2,000万円という数字をはじき出しています。つまり、65歳まで30年かけてつくった2,000万円を、65歳以降、公的年金の不足分を補うために毎月5.5万円ずつ取り崩していき、95歳には貯蓄が底をつく、という前提になっていると言えます。

■不動産投資なら「積み立て」も「取り崩し」もいらない

 ところが、不動産投資による「じぶん年金」づくりは、これらと決定的に異なります。なぜなら、老後のための「積み立て」も必要なければ「取り崩し」も発生しません。たとえ何歳まで生きたとしても、取り崩しによって貯蓄が底をつくことがないのです。
 具体的にイメージしてみましょう。先ほどと同じ35歳のときに、返済期間30年のローンを組んで投資用の区分マンションを購入するとします。購入後は、空室でない限り、毎月家賃収入が得られます。
 30年後、ローンを完済すると、毎月、家賃収入から管理費などの支出を差し引いた金額がそのまま手元に残るようになります。長い年月が経過しているので当初より家賃そのものは下がっているかもしれませんが、ローン返済がないので、毎月4〜5万円が手元に残る状態になる可能性は高いでしょう。しかも家賃収入は、金融商品の積立のように「受け取ったらその分元本が減っていく」という類のものではありません。物件を所有している限り、ずっと受け取り続けることができるのです。
 もちろん、いくらの物件を購入し、いくらのローンを何年で組むのか、どのようなエリアに購入するのか、管理費や修繕積立金がいくらなのかといった個別の条件によって実際の収支は変わってきますが、不動産投資による「じぶん年金」づくりが、金融商品を活用した「じぶん年金」づくりとは決定的に異なるということはお分かりいただけるのではないでしょうか。

■さらに売却すればまとまった現金が手に入る

 不動産投資による「じぶん年金」づくりのメリットはそれだけではありません。物件自体を売却することで、まとまった現金を手に入れることができます。
 前回の記事でも、シングル女性が投資用マンションを購入してローンを完済すれば、「売却すればまとまった現金が手に入る」資産になるとお伝えしましたが、将来、どのような家族構成だったとしても、この「売却してまとまった現金を手に入れる」という戦略がとれる老後と、とれない老後とでは、心のゆとりや選択肢の幅が大きく異なります。売却して手に入れた現金を一時金として高級老人ホームに入居したり、買い物や通院に便利な場所に終の棲家を購入したり、子どもと同居するための二世帯住宅を建てるための資金に充てたりと、その選択肢は多岐に渡ります。
 このように一度購入してしまえば、老後のためにコツコツと積立をしなくても「じぶん年金」をつくることができ、ローン完済後は無期限で毎月まとまった家賃収入を得られ、さらに売却すればまとまった現金を手に入れることができる不動産投資は、最強の「じぶん年金」づくりの方法だと言えます。ただし、どのような物件でもこうした理想のシナリオが描けるわけではありません。大きな金額の投資であるがゆえに、間違った物件選びをしてしまうと本末転倒になってしまいかねないのも事実です。ローン返済中も、ローン完済後も、長期にわたってメリットをもたらしてくれる物件をしっかりと選別する必要があるということを肝に銘じておきましょう。

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不動産エコノミスト
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