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2016.07.29

増税シナリオ先送りのあと、日本経済はどうなる

sakiokuri

 安倍首相は2016年6月1日、消費税の10%への引き上げを2017年4月から2年半先に延ばすと発表しました。

 2016年7月10日の参議院選挙では、自民党が単独で参議院議席の過半数を獲得し、安倍首相は経済政策に全力をあげると表明しました。今後、日本経済はどうなっていくのでしょうか。想定されているシナリオを考えてみましょう。

次から次にタマを撃ち続けるしかない

 2008年のリーマンショック以降、世界経済の成長を牽引してきた中国の経済成長のかげりがはっきり見えた今、米国の好況がピークを超えて不況に入った時、もしくは世界のどこかで局地的戦争が起きる時が、次の危機になるでしょう。日本経済が米国の好景気に下支えされているのは周知の事実です。安倍政権の経済政策「アベノミクス」は大方の経済人が認めているものの、「次から次にタマを撃っていかないと政権が持たない」政策です。

 そのポイントは、財政出動と量的緩和です。日本と同じように経済成長の停まったヨーロッパは、いわゆる「左翼政権」までもが、財政出動と量的緩和政策を支持しています。日本でも安倍政権は2012年12月の発足以来、日銀・黒田総裁との二人三脚でこの政策を担ってきました。今の時代では王道政策であり、他の道はありません。

 しかし日本の場合、社会保障の税負担が年々増えているため、財政出動させたいものの、借金増(=国債増)をどう抑え込むかが独自の大課題です。

政策の「採点表」・経済成長率の推移は

 国の政策の善し悪しを計る指標の一つに「経済成長率」があります。第2次安倍政権の始まった2012年度は0.9%でした。これはバブル崩壊後の1991年〜2015年の平均成長率と同レベルです。2013年度は2.0%で少なくとも91年以降では最も高い経済成長率となりましたが、2014年度は−0.9%のマイナス成長となりました。同年4月の消費税8%引き上げと、その駆け込み需要の影響です。

 2015年度は0.8%、そして2016年度は当初1.7%と見込んでいたものの0.9%に下方修正されることが7月にわかりました。これは、駆け込み需要を消費税先送りに伴う修正ですが、結局安倍政権時の経済成長はバブル崩壊以降の平均値よりも高くなっていないことを示しています。

国債依存度は下がってきた

 この間に失業率は、2012年12月の4.3%から3.2%(2016年5月)に下がり、TOPIX(東証1部株価指数)は859.8から1245.8と1.44倍になりました。また、訪日客は871万人から2,136万人に増え、円相場は1ドル83.6円から105円台まで安くなりました。

 結局、円相場によって変化するといえるでしょう。円が安くなれば株価が上がり、海外から人が来ます。失業率の減少は労働人口が減ってきたことの表れであり、景気が良くなったわけではないという指摘があります。その一方で、国債依存度は2012年度の48.9%から徐々に下がり、2016年度(当初予算)では、35.6%になりました。

 国債依存度とは、「建設国債」と「赤字国債」(特例国債)の合計額が一般会計に占める割合を示した数字です。例えば、建設国債とは住宅や車をローンで買うこと(1度に高額な支払いは困難なので長期ローンで賄う)、赤字国債は生活費の不足を借金で賄うこと(一時しのぎなら良いが、続けば借金がふくれ破綻する)です。

 つまり、建設国債はまだしも、赤字国債が増え続けるのは避けねばなりません。国債依存度の減少は赤字国債の減少によるものですが、それでもすべての国債を合わせた普通国債残高は、2012年度の705兆円から2016年度(当初予算)は837兆円まで増えました。残高の対GDP(国内総生産)比率は148.6%(2012年度)から161.5%(2016年度当初予算)まで増加しています。

今後のポイント1 財政出動に赤字国債を発行するかどうか

 安倍首相は、先の選挙期間中も選挙後の記者会見でも、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかすことで、デフレからの脱出速度をさらに上げ、名目GDPを戦後最大の600兆円に押し上げる」と強調しました。秋の経済対策で公共事業を中心に10兆円規模の大型補正予算を組み、財源としては「建設国債」の増発と、低金利で減少する国債の利払い費を充てるようです。「赤字国債の発行は何としても避けたい」と石原伸晃・経済財政担当相は話しています。年度途中の国債発行は、2013年1月、政権発足直後以来のことです。

 しかし補正の中味は、「低金利を生かした財政投融資で、リニア新幹線の大阪開業を8年程度前倒しや、整備新幹線の建設促進など、今後5年で官民あわせて30兆円規模の事業を確保する」ことが目立つ一方で、農林水産物・食品の輸出増と、そのための輸出関連のインフラ整備加速、海外からのクルーズ受け入れのための港湾施設整備、訪日外国人のための観光業強化策などのようです。

 参院選で、自民党は東北6県のうち5県と沖縄県で敗北し、参院選と同時に投開票された鹿児島県知事選では、原発再稼働を進めてきた自民推薦の現知事が敗北しました。地方での敗北は、政治的にジワジワと効いてきます。それだけに地方対策、地方創生関連予算は、政権浮揚のためには必須と言えるでしょう。

 今回の補正予算の実行によって、2016年度の成長率を修正後の0.9%、2017年度の見通し1.2%からどの程度上げられるかがポイントになりますが、これで果たして成長戦略と言えるのでしょうか。

今後のポイント2 日銀は物価目標達成時期を取り下げるかどうか

 安倍政権の命運を握っているのは、日本銀行の金融政策です。日銀頼りの金融政策が、円安を招き、株式市場の活性化を導いたと言えます。

 日銀の第一弾の政策は2013年4月でした。「黒田バズーカ」と呼ばれ、一連におよぶ大胆な金融緩和策によって、消費者物価を2%上昇させるという目標を当初「2年」としていました。しかし、年間80兆円もの資金を投入し、国債購入に充てても、肝心の物価は上昇していません。2014年4月には「2015年度を中心とする期間」、さらに2015年4月には「2016年度前半ごろ」と変更して「2年」の物価目標を撤回。その後も計4回、先送りをしてきました。もし次に開かれる金融政策決定会合で、物価目標の達成時期を延ばせば、5回目となります。ここまで来ると「物価目標」という政策そのものが、実質的な意味を失くしてしまいます。

日銀が打つことのできる「次の一手」は

 日銀が7月初めに発表したマネタリーベース(6月末)の残高は403兆9,327億円と、7ヵ月連続で過去最高を記録しました。量的緩和策実施前と比較すると2.8倍にも増えました。一方で、マネーストック(通過残高)は前年同月比2%増加にとどまっています。要は、資金が市場に行き渡っていないのです。

 もし仮に日銀が今手を打てるとすれば、マイナス金利をさらに拡大するという、追加緩和などが考えられるでしょう。しかし、マイナス金利は予想外の副作用として、ドル調達コストを大幅に押し上げ、日本の金融機関の収益を圧迫していることが表面化してきたため、機関投資家からも懸念が表明されています。

 「金融政策は金融機関のためにやっているものではなく、日本経済全体のためにやっている」と、黒田総裁は会見でも大見得を切りました。それ自体は正しい発言ですが、これ以上マイナス金利を掘り下げても、アメリカの好景気のかげり、英国のEU(欧州連合)からの離脱決定で、世界経済の先行きは不透明になっており、追加緩和も効果を上げられず、無意味化する可能性も考えられます。

 日本経済は、極めて難しい時期にさしかかっているといえます。政府の補正予算発表も日銀の金融政策決定会合も、ともに2016年7月下旬に予定されています。経済の先行きと金融政策の動向は不動産市場にも大きな影響を与えます。補正予算の中身と日銀の発表が注目されています。

(写真=PIXTA)

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