
え、そうなの? 減価償却費の本質とは? 不動産投資の必須知識
減価償却とは
節税効果などを狙ってマンション経営など不動産投資を考えている人は多いのではないでしょうか。その準備段階で必ず出てくるキーワードが「減価償却」です。不動産を購入したときにすべてを一度に費用とせず、毎年少しずつ分ける仕組みのことをいいます。
仮にマンションを3,000万円で購入したとします。その年に全額を費用に入れると大赤字になりますし、次の年は維持費以外の出費がないため大きな利益が出ますが、その分税金が高くなってしまいます。そこで、例えば購入費の3,000万円を30年分に分けて毎年100万円ずつ計上していくということです。ただし実際の支払いは購入時に済ませているので、いわゆる「分割払い」とは大きく異なります。
ビルなど建築物の価値は年数が経つほど、具体的には減価償却費の分だけ下がります。例にあげたマンションの場合、購入して5年後の価値は「3,000万円-5年分の減価償却費の累計額 」となります。「減価」とは価値が減ることです。つまり「減価償却」は「モノの劣化代」といえるでしょう。
ちなみに購入費を分割する年数は建物の仕様によって決まっており、住宅用の「耐用年数」は鉄筋コンクリートが47年、重量鉄骨が34年、木造が22年とされています。耐用年数が短い建物ほど年間の減価償却費が多くなり、利益は減ることになります。
減価償却は「魔法の経費」?
この減価償却、実際に支出がないにもかかわらず税制上は「経費」として処理することが認められています。節税や負担感の面から見てもマンション経営を考えている人にとっては嬉しい制度で、「魔法の経費」と呼ばれることもあります。
しかし、減価償却を最大限活用するには、きちんとした知識を身につけたうえで、長期的な視点を持つことが必要です。減価償却は帳簿上の数字と実態にギャップが生まれます。例えば3,000万円のマンションを購入した場合、その現金は購入時に出ていきますが、その年の損益計算書には減価償却の額だけが計上されます。翌年以降は、現金は出ていかないのに、経費計上ができるというわけです。
毎年均等になるように費用配分する「定額法」の他に、減価償却費が毎年一定の割合で減っていく「定率法」もあります。先に多めに支払うことで減価償却費を早く計上することになり、後々の償却費が少なくなります。投資額の資金回収を早めることができるということです。とはいえ、不動産投資では年を追うごとに修繕費等の経費が上がり賃料は下がる可能性もあるので、年月が経過するにつれ利益が減るのが通常です。減価償却とは支出と経費のタイミングがずれるだけの話です。トータルでは必ず「減価償却費=元本返済」となることを忘れないようにしなければなりません。
なお、減価償却ができるのは劣化が生じるものに限ります。つまり、不動産において減価償却ができるのは建物躯体と設備だけであって、劣化しない土地や借地権はできません。マンションも、経費にできるのは建物だけです。建物と土地を同じ不動産として購入しても、土地購入資金として支払ったお金は減価償却の対象にはなりませんので注意しましょう。
減価償却の本質は
会計の世界では「費用は収益が上がったタイミングで計上する」という原則があります。これをマンション経営に当てはめた場合、収益は長期にわたり発生することになります。そこに減価償却の根本があります。経費を分割して計上することで、会計的には過去の投資額を少しずつ回収しているということです。
もう一点、日本では地震や台風といった自然災害が多いことから「建物はいつか壊れる」という考えに基づいて減価償却をしている側面もあります。
マンション経営における減価償却は、あくまで経費計上のタイミングをずらして均等に経費を分けるということなので、節税などの直接的効果は薄いことを心得ておくべきでしょう。
(写真=PIXTA)
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