増税前に把握したい！ 消費税引き上げがマンション経営に与える影響

　2017年4月に予定されていた消費税の増税は延期されることが濃厚となりましたが、今から消費税の引き上げまでに準備しておくことは何なのでしょうか。投資用マンションの売買および経営で発生する消費税の扱いについて確認し、マンション経営にどのような影響を与える可能性があるか見ていきましょう。

投資用マンション売買時の消費税と課税事業者について

　投資用マンションの取得時、土地には消費税が課税されませんが建物には消費税が課税されます。この他、不動産会社に支払う仲介手数料、ローンを組むための手数料、不動産登記時の司法書士に対する報酬、これらに対して消費税が課税されます。なお、マンション取得時には登録免許税が必要ですが、これには消費税が課税されません。投資用マンションの売却時には、売却代金のうち、建物部分に対して消費税が課税されます。

　次にマンション経営における消費税ですが、マンション経営をする人たちすべてが消費税の課税事業者になるわけではありません。要件を満たすと消費税の免税事業者になります。

　消費税には免税点（納税を免除するための基準）が設けられており、ある課税期間に係る基準期間（個人事業者の場合は、その年の前々年）における課税売上高が1,000万円以下の場合は、その課税期間の納税義務が免除されます。新たに事業を始めた場合は、その時点で基準期間の売上がないので原則として免税事業者となります。

　ただし2013年1月1日以後に開始する年、または事業年度については、その課税期間の基準期間において、課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間をいいます。

マンション賃貸経営の諸費用に関する消費税

　マンションを個人に賃貸する時に得られる家賃には消費税が課税されません。ただし、事業用としてマンションを賃貸する場合は消費税が課税されます。また、マンション経営では諸費用が発生しますが、これらは費目によって消費税の扱いが異なります。具体的にどのように違うのか確認してみましょう。

1. 消費税が課税される諸費用
　消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等（商品や製品などの販売、資産の貸付け及びサービスの提供）とされています。したがって、マンションの賃貸経営における諸費用のうち、修繕費、管理諸費用、広告宣伝費、水道光熱費、通信費など、一定のサービスに対して支払われたものは、消費税が課税されます。

2. 消費税が課税されない諸費用
　マンションの賃貸経営における諸費用のうち、固定資産税などの税金に関する支払いは「租税公課」という諸費用で処理されますが、消費税は課税されません。また、火災保険料や借入金に対する支払利子は消費税の課税がなじまないので課税されません。建物部分には「減価償却費」という費用が計上されますが、建物は購入時に消費税が課税されるため、減価償却費に関しては消費税が課税されません。

　さらに、青色申告をしていて、専従者に対して給与を支払っている場合、この給与に対しても消費税は課税されません。

消費税増税に伴うマンションの賃貸経営への影響

　将来、消費税が10％に引き上げられた場合、マンション経営にはどのような影響が出てくるのでしょうか。仮に消費税が10％に引き上げられても、マンションの家賃は消費税の課税対象ではないため影響はありません（ただし、駐車場の貸し付けを行っている場合は、消費税の課税対象となります）。

　マンションの居住者にとっては家賃引き上げとはなりませんが、増税に伴い物価が上昇し、家計の負担は増えるでしょう。そのため、居住者が生活費の中でも大きい割合を占める住居費を抑えようとする可能性があります。具体的には、家賃の安いマンションに転居するか、家賃の引き下げ交渉に出てくるかです。

　マンションのオーナーとしては、賃貸経営におけるキャッシュのマイナスに直結する空室を避けるために、家賃引き下げを検討しなければならないかもしれません。

まとめ

　私たちの日常生活に大きな影響を与える消費税の増税は、マンション経営にも影響を及ぼします。消費税が増税される前に、マンションの売買と賃貸経営で消費税が掛かるものと掛からないものの区分を確認しておきましょう。また、マンション居住者の行動の変化にも注意して家賃設定をどのようにすべきか、一度検討しておくことをお勧めします。

（写真＝PIXTA）