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2016.08.03

日本のインフラはどうなる? まちづくりの将来への提言

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 2012年に中央自動車道の笹子トンネルで起きた天井板崩落事故は若者ら9人が亡くなる大惨事となり、35年前の交通インフラの老朽化が引き起こした悲劇として大きな注目を集めました。2016年4月に起きた熊本地震では、5市町の本庁舎が倒壊の恐れにより使用中止になったり、国道にかかる阿蘇大橋が落橋したりと、甚大な地震被害とともに、公共インフラの問題として、世の中に大きな注意喚起をする結果となりました。

 日本は1960年代、高度経済成長期に道路や上下水道、橋や学校などの社会インフラを次々と建設し、それが今、建て替え時期を迎えています。総人口も労働力人口も税収も減るこの先は、「減築」、つまり設備投資を減らしつつ、日本の社会インフラを維持するという、非常に難しい舵取りが必要な時代に突入しようとしているのです。

日本の成長を支えてきたインフラの発達

 日本は、高度経済成長時期にインフラを整備してきました。

 鉄道インフラを例にすると、東京から鉄道で日帰りできる範囲(午前7時以降に出発して、現地で1時間滞在し、22時までに東京駅に帰着できる範囲を指す)は、戦後すぐの1947年には、豊橋(愛知県)、御代田(長野県北佐久郡)、土合(群馬県利根郡)、白河(福島県)などでした。しかし、2016年になると、鉄道と高速道路の発達により北海道の大部分と沖縄を除く範囲が日帰り可能となりました。

過酷な自然環境の中でのインフラ維持は大変

 一方、日本の自然環境はインフラ維持において過酷です。東南アジアのチャオプラヤ川、ヨーロッパのドナウ川、アメリカのミシシッピ川など、平野部の緩傾斜地を流れる世界の主要河川と違い、日本の河川は急勾配で距離が短く、大雨で一気に流量が増えます。平常時と洪水時の流量比較では、ドナウ川が4倍、ミシシッピ川が3倍になるのと比較すると、日本の利根川は100倍にもなります(国土交通省『洪水時と平常時の流量比較』より)。しかも近年は、日本の気候が亜熱帯化し、スコール現象が頻繁に起きています。

 また地震も、世界で起きるマグニチュード6以上の地震の約2割が、日本で起きています(内閣府『平成22年度版防災白書』より)。洪水、地震以外にも、台風、豪雪、土砂災害、火山災害などの災害が起きやすく、日本は自然災害が多いといわれています。

「インフラ更新」の考え方を取るべき時期が来た

 鉄道、道路、上下水道、橋、学校など日本の社会インフラは、1960年代以降の高度経済成長期に一斉に建設されています。その多くが耐用年数とされる50年を超え、本来ならば建て替えの時期を迎えているのです。国土交通省が2015年にまとめた「建設後50年たつ社会インフラ」を、2013年とその10年後、20年後で比較した数字を見ると明らかです。

日本インフラどうなる_図1
 (国土交通省『国土交通白書(2015年)』より)

 道路橋、トンネル水門など河川管理施設は、東京オリンピック後の2023年には、半数近くが50年以上経過します。港湾施設も33年には半数以上が50年を経過。

 国土交通省は13年にインフラ超寿命化基本計画を策定し、「インフラメンテ」に大きく舵を切りました。

 この計画で、全国の自治体に求めた公共施設等総合管理計画の策定期限は2016年度末とされ、早ければ2017年度から本格的な対策が開始されます。国交省は、こうしたインフラの将来の維持管理・更新費として、2023年度は4.3〜5.1兆円、2033年度は4.6〜5.5兆円を見込んでいます。

 一方、東洋大学の根本佑二教授(公民連携、地域再生専攻)は、国交省の対象施設だけでなく、国、地方の公共施設や学校、公営住宅、道路、上水道も含めた公共インフラのメンテナンス費用を、年8兆9,000億円と計算しています。毎年、5兆円から9兆円と、途方もない金額です。

少子化にどう対応するかがポイント

 老朽化対策が重要なのはもちろんですが、国や自治体の財政の窮乏状態は明らかで、際限なく予算を投じることができません。既存のインフラの中には、少子高齢化に伴い、使わなくなるものがあります。例えば、東京と地方では、公共施設の利用度が違います。一部の地域では少子化が終わり高齢者も減少傾向、介護施設すら余剰になり始めています。その一方で、これから東京はまったく足りなくなるでしょう。こうした状況に合わせて、学校や児童館などの維持管理費や利用状況を公表し、存廃も含めて住民と協議するという自治体も出てきています。

 エリアによる不動産需要の二極化がしばしば話題にされますが、社会インフラについても「選択と集中」は避けられない時代なのです。

具体的に何をすべきか

 2048年、日本の人口は1億人を切ると予想され、これは高度成長の始まった1965年とほぼ同じ水準です。違う点は、65年以降は人口が増えたのに対してこれからは人口が減っていき、2035年以降には3人に1人以上が65歳以上の高齢者になることです。

 こうした時代の「まちづくり」は、第一に、意識してコンパクトに、そして、公共サービスは複数の自治体で共同実施するなどの工夫が必要です。第二に、残すべきインフラと廃棄すべきインフラの選択です。その場合は、住民の命に関わる施設が優先されることになるでしょう。第三に、政府と企業が役割を分担して、公共サービスを提供する官民パートナーシップ(PPP)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)を積極的に活用すべきでしょう。インフラ建設、維持管理は基本的に民間移行し、行政はそこを借りて、公共サービスを提供するぐらいの発想の転換が必要です。

 従来通りの発想でインフラを更新してしまうと、今後半世紀以上、インフラを更新する時期は来ませんし、莫大なインフラの維持管理をすべて負担する資金の当てもないため、国民がメンテ不足のインフラを使い続ける「危険な時代」になってしまうということです。インフラをどうするのか、私たちがとるべき選択は明らかです。

(写真=PIXTA)

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